「ネットで高齢者見守り」効果…酒田で実証実験

2015年11月11日読売新聞

 小型の電波発信器とインターネットを活用した高齢者の見守りシステムの実証実験を行った酒田市は10日、実験結果の報告会を市内で開いた。認知症の高齢者の見守りに一定の効果があることが確認された一方、実用化に向けて電波の受信装置の普及やコストの削減などの課題も指摘された。

 実験で使われたシステムは、山形市の第3セクター「キャプテン山形」と鶴岡市の鶴岡工業高等専門学校が共同で開発した。500円玉ほどの大きさの発信器を身に着けた高齢者が、公衆無線LAN(Wi―Fi)装置の近くを通過すると、装置が電波を受信。サーバーを経由して場所や時間の情報を家族の携帯電話へ自動的にメールで知らせる。「IoT」を活用した先進的な取り組みとして注目されている。

 実験は今年6月4日~7月31日、同市八幡地区で、50~70歳代の男女計12人とその家族らが協力して行われた。地区内の商店や介護施設などにある11か所の公衆無線LAN装置を受信機として使用した。

 実験の結果、システムは計647回、参加者が通過したことを検知し、検知状況は「良好」。メールの送受信も計597件あり、正常に作動した。アンケートでは、ほぼ全員がデザインや大きさについて「良い」と回答し、9人が発信器を身に着けても「苦にならない」と答えた。

 一方、実用化するには、受信機となる公衆無線LAN装置の普及が必要になる。市健康福祉部によると、市内の認知症高齢者は昨年6月時点で6765人で、増加傾向にあるが、受信できる機械は市中心街に集中し、地区ごとに格差があるのが現状だ。

 また、全地球測位システム(GPS)を活用した従来の端末よりは安価なものの、発信器の価格が約5000円という点も、コスト面の課題として指摘された。

 キャプテン山形の松川清専務は「今回の課題を踏まえたシステムの構築に努め、認知症の見守り以外にも児童の下校時に利用するなど、用途を広げてコスト面の課題も克服していきたい」としている。

<IoT> Internet of Thingsの略。直訳すると「モノのインターネット」。ネットに接続した家電製品などを活用し、様々な情報を処理して分析やサービスに生かす仕組み。