トイレの回数も感知 老親の「見守りサービス」が続々登場

2015年10月19日週刊朝日

 内閣府の調査によると、2015年には65歳以上の男性の12.9%が、女性にいたっては21.3%がひとり暮らしと推計されるという。この割合は年々増加すると見込まれている。離れて暮らす“おひとりさま”の老親。心配しながらも、なかなか連絡できないという人も多いのではないだろうか。

 そこで注目したいのが、ひとり暮らしのお年寄りや高齢者だけの世帯の安否を定期的に確認してくれる「見守りサービス」だ。

 全国6万人以上のお年寄りに弁当を配達している「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」では、配達の際に手渡しを徹底することで安否確認を兼ねたサービスを実現させた。事前の連絡なく不在の場合は、玄関先から電話をかけ、つながらない場合は家族や担当のケアマネジャーに連絡するシステムだ。実際に、自宅で転んで動けなくなっている高齢者を配達時に発見し、救急車を呼んで事なきを得たこともあるそうだ。運営本部のシニアライフクリエイトの菅原邦寛さんは話す。

「お客様の中には配達員以外の人と言葉をほとんど交わさない方もいます。体調を尋ねるなど、配達時に何らかのコミュニケーションを取るようにしています」

 テクノロジーを駆使した見守りもある。ソフトウェア開発大手のソルクシーズが提供する「いまイルモ」は、高齢者の自宅に設置するセンサーが、人の動きや温度、湿度、部屋の明るさからトイレの回数まで感知。離れて暮らしていても、家族はその様子をスマートフォンなどでいつでもリアルタイムで確認できる仕組みだ。

 軽い認知症を抱えて都内でひとり暮らしをする父親(85)のため、半年前からこのサービスを利用している神奈川県の会社員男性(43)はこう話す。

「以前、脱水症状を起こしているところを訪問看護師に発見されて救急車で運ばれたことがあるので、トイレの回数がわかるのがありがたい。体調の変化に早めに気付けば大事に至る前にケアマネジャーに連絡して必要なケアを頼めるし、仕事中に呼び出されるような事態も防げます」

 サービスを利用する前は、千葉県に住む姉と交代で電話をかけていたが、続かなかったという。

「今も週に1度は会いに行っていますが、滞在時間が短いため生活リズムの変化に気付くのは難しい。認知症が進むと昼夜が逆転するそうなので、真夜中に照明をつけていないか部屋の明るさも気をつけてチェックしています」

 こうした高齢者向けの見守りサービスは、行政の制度の不足を補う役割もあるようだ。遠距離介護を支援するNPO法人パオッコの太田差惠子理事長は、

「多くの自治体がペンダント型の緊急通報装置を無料ないし格安でひとり暮らしのお年寄りに提供していますが、いざという時に駆けつけてくれる人が近所にいなければならないなどの条件をクリアできず利用できない人もいます」

 と指摘する。一方、民間のサービスは使い勝手が良く、選択肢も豊富だ。しかし、企業が期待するほどには普及が進んでいないのが実情という。

 太田さんによると、見守りサービスの利用には意外なハードルがあるのだとか。子どもが、離れて暮らす年老いた親を心配して利用を勧めても、親の側が断ることが多いという。

「まだ元気だからそんなもの必要ない、と親御さんに拒否され契約に至らないケースを非常に多く耳にします。監視されている気がするとか、プライバシーが筒抜けになると心配する人も多いようです」(太田さん)