配食サービス、北海道釧根地区でも拡大 高齢化で需要増、参入相次ぐ 安否確認への期待も

2015年10月03日北海道新聞

 各戸に食事を配達する「配食サービス」が釧根管内でも広がりをみせている。民間事業者が次々と参入し、サービスの種類やメニューも多様化。主に高齢者世帯が利用しており、配達時に安否を確認する見守りサービスへの期待も高い。高齢化の進展で今後も需要が高まるとみられるサービスの現状を探った。

 「いつもどうも。助かるね」。9月29日午後、釧路市堀川町の集合住宅。1人暮らしの上林春樹さん(69)は本日の夕食のおかずを配達員から受け取ると、にっこりと笑顔を浮かべた。

 小林さんは2年前からコープさっぽろの配食サービスを利用。日曜を除く週6日、夕食のおかずを宅配してもらっている。「調理は大変だし、自分が好きなものばかり食べてしまう。カロリー計算もされており、肥満防止にいい」と話す。

 コープさっぽろは釧路市武佐の旧店舗を配食工場に改装し、2013年7月から日曜を除く毎日、夕食の配達を始めた。「普通食」とカロリーと塩分を控えた「低カロリー食」の2タイプを用意。利用登録者は約500人で、菊崎直樹工場長は「約7割が65歳以上。1人暮らしや高齢の夫婦世帯が多い」と話す。

 利用する理由はさまざま。市浪花町で1人暮らしの女性(88)は「火事が心配で火を使う料理ができない。施設には入りたくないので配食はありがたい」。夫婦で利用する70代男性は「妻が認知症で食事をつくるのも難しいため」と話す。

■持病に応じ配慮も

 こうした配食の需要増をにらみ、近年は全国チェーンの釧路への参入が相次ぐ。07年には「宅配クック123釧路店」(共栄大通9)、昨年6月には「ライフデリ釧路店」(光陽町9)もオープンした。セブン―イレブン・ジャパン(東京)も各店(一部を除く)で食事配達サービス「セブンミール」を実施している。

 メニューはいずれも日替わりで、価格はおかず1食500円前後から。高齢者の利用が多いが、中には単身赴任や共働き世帯など30~50代からの注文もある。

 多様なニーズに対応しようと、各店ともサービスの充実に力を入れる。「宅配クック」と「ライフデリ」は夕食だけでなく朝、昼食も対応。1日1食から注文を受ける。「日曜祝日も利用を希望する人は多い」(宅配クック)とし、年末年始も含め年中無休で配達する。

 メニューも多様だ。コープさっぽろは主菜を肉か魚のどちらか選択でき、特定日には人気の駅弁などを選べるようにした。宅配クックとライフデリは腎臓病や透析治療中の人向けのメニューなどを用意。かむ力が弱い高齢者のための「やわらか食」「ムース食」や、料理をきざんで食べやすくするなど個別対応もする。

 ただ利用者の中には「飽きる」「同じ品が出る」など厳しい指摘をする人もいる。各事業者ともメニューは日替わりだが、ある事業者は「見た目が同じように見えたり、味付けが似るのかもしれない。食の好みはさまざまで対応は難しいが、さらに工夫を凝らしたい」と話す。

■中心部に業者集中

 配食とともに期待されているのが配達時の安否確認だ。各事業者とも配達先の高齢者らに異変があった場合、家族などに連絡する。「80代の女性が庭で動けなくなっているのを配達員が発見し、事なきを得た」(宅配クック)など、高齢者を見守る役割も果たしている。

 一方、大手チェーンの出店は釧路市内に集中し、配達エリアも阿寒、音別地区を除く釧路市と釧路町の一部が中心。それ以外の地域では、自治体などが配食サービスを手掛けている。根室市は市社協に委託して実施しているが、原則として65歳以上で平日の昼食のみの配達。他の自治体でも対象者が限定され、配達も限られているのが現状だ。

 ある事業者は「困っている人はいると思うが、人口が少ない地域は出店しても採算が取れない」と打ち明ける。コープさっぽろは「30世帯の利用が確保できれば配達したい」とし、厚岸、中標津などでの配達を検討している。(俵積田雅史)