遺品整理、代行します 進む核家族化で遺族に負担
2015年9月16日中日新聞
大切な人を失った遺族にとって、思い出のつまった遺品の片付け作業は、精神的にも肉体的にもつらい。そんな遺族に代わり、故人の遺品を片付ける「遺品整理サービス」が盛んになっている。核家族化が進み、「仕事が忙しくて行けない」といった理由で、依頼されるケースも多い。需要増を見込み、中部地方でも参入企業が相次ぐ。
◆イオンやヤマトも参入
一人暮らしだった愛知県内の七十代女性の部屋には、ソファや大きな鏡が置かれ、身の回り品も多く残っていた。「大橋運輸」(同県瀬戸市)のスタッフ五人が今月上旬、女性の長女(43)の立ち会いで、遺品を段ボール箱に詰め始めた。
女性は六月に亡くなった。「二人の兄は仕事で忙しいから」と、離れて住む長女がこの夏休みに訪れ、一部を運び出したという。「でも、なかなか片付けられず、業者に依頼した。悲しくなる作業で、精神的にもつらい」と打ち明けた。
自動車部品の運搬が主力の大橋運輸だが、約五年前から遺品整理サービスを本格的に開始。鍋嶋洋行社長(47)は「それまでも頼まれることはあったが、最近は件数が増えてきた」と話す。専門スタッフ十人をそろえ、年間五十件以上の依頼をこなす。
一般的な作業は、遺品を分別後、宝飾類など貴重品は遺族のもとに届ける。ほとんどは不用品になり、廃棄か、リサイクル業者に持ち込む。空になった部屋の清掃サービスもある。業界関係者によると、料金は1LDKで十五万~二十万円が一般的という。
専門会社として始めた「トップサービス」(名古屋市)では、写真などの扱いを遺族に確認し、仏壇や人形は供養して処分する。「思い出深い遺品を扱うため、遺族への気配りが欠かせない」と白石佳史社長(32)。利用者が安心できるよう追加料金をとらず、丁寧なサービスで差別化を図る。
大手企業も次々と参入している。ヤマトホールディングス子会社「ヤマトホームコンビニエンス」は二〇一二年、全国でサービスを開始。昨年度の受注は五百件で、前年の一・五倍に伸びた。昨年四月に中部でのサービスを本格的に開始したイオン子会社「イオンライフ」でも、依頼件数は右肩上がりで伸び、サービス開始当初に比べて一・五倍に増えた。
一般社団法人遺品整理士認定協会(北海道千歳市)によると、同協会認定の遺品整理士を抱える企業は約三千五百社。このうち中部には八百社ほどあり、増加傾向が続いている。
遺品整理サービスへの参入が相次ぐ背景には、高齢者の孤独死の増加もある。協会の伊藤友勝事務局長(35)は「依頼の一割が、お年寄りの孤独死だ」と説明。身寄りがない人がアパートなどで亡くなり、家主や行政関係者らが依頼するケースという。