ユニーク保険:ドローンからペット、孤独死まで…続々登場

2015年7月28日毎日新聞

 備えあれば憂いなし−−。身の回りで起こりうるリスクを安価な保険料で補償する新型の保険が拡大している。葬儀代の算段や孤独死への対応といった超高齢社会の問題から、ドローンの落下など新たなリスクへの対応まで、専業や大手がユニークな保険商品を打ち出して商機を広げようと懸命だ。人口減少で頭打ちとされる国内保険市場のけん引役になれるのか。

 新型保険の代表格が「少額短期保険」と呼ばれる商品だ。保険金額が1000万円以下の商品が対象で、約80社が新たなニーズを探りながら代理店やインターネットで販路を拡大。2014年度の保険料収入は前年度より1割増え、600億円を突破した。

 少額短期保険で広く知られる「ペット保険」はペットの治療費などを補償するもの。取り扱う9業者の保険料収入は前年度より2割以上増えた。ペットを飼う単身世帯の増加を背景に、飼い主の死亡に備えた保険も登場。専業の「アスモ少額短期保険」は4月、飼い主が死亡した際、ペットを預かる家族に世話代として最高300万円を支払う商品を発売した。保険料は50代女性で月2000〜3000円弱。同社は「ペットは家族のような存在。自分が先立った後を心配する飼い主は多い」と話す。

 高齢化で「葬儀保険」も注目されている。「SBIいきいき少額短期保険」では、葬儀費用として100万〜200万円を補償する死亡保険の契約件数が6月末に約1万5000件となり、1年で2倍に増えた。09年に発売したが、少子化や核家族化で、遺族にとって葬儀費用の負担が重くなってきたほか、望み通りの葬儀をしてもらいたい人も増え、女性を中心に知名度が向上した。1年ごとの掛け捨てで、保険料は年齢とともに上がり、70代女性で月1600円程度、80代後半になると8830円になる。ただ、契約できるのは79歳までで、90歳になると保障はなくなる。

 大手も時代の要請に応える新商品を打ち出している。三井住友海上火災保険は、賃貸住宅のオーナー向けに、入居者が孤独死した際に生じる部屋の清掃費や遺品整理にかかる費用を補償する商品を10月に売り出す。東京海上日動火災保険は、他人の車を運転する際に500円から加入できる1日単位の自動車保険が好調だ。4〜6月の申込件数は前年同期より4割多い約19万件。自身で車を持たず、親や友人から借りて運転する若者に人気があるという。

 普及が進むドローン向けの商品も登場。東京海上日動火災保険や損保ジャパン日本興亜は今年、商業用目的のドローンを対象に、操縦ミスで人にけがをさせたり、物を壊したりした際の賠償金などをカバーする保険の販売を始めた。機体の価格が約30万円で支払限度額を1億円に設定した場合、年間保険料は3万円超。撮影した映像がインターネットに流出して個人のプライバシーを侵害した際の賠償特約もある。【土屋渓】

 ◇少額短期保険

 補償額(保険金)が1000万円以下で、保険料も少額のものが多い新しい保険制度。年金保険や終身保険は取り扱えないなど種類によっても制限がある。少額短期保険の制度がスタートしたのは2006年。それまで少額の保険は法律に基づかない任意の共済が主に取り扱っていた。しかし、資金が政治家の選挙費用などに流用された1996年のオレンジ共済組合事件を受けて保険業法が改正され、少額短期保険制度を導入。任意共済は事実上廃止され、多くの団体が少額短期保険に移行した。事業者は地域の財務局に登録する必要があり、最低資本金など保険業法に基づく規制も適用される。ただ、破綻時に契約者を保護する公的なセーフティーネットはない。