ウエアラブル端末、医療・高齢者介護に照準-東芝やNTTなど、用途拡大へ機能強化

2015年7月21日日刊工業新聞

 ヘルスケア分野でウエアラブル端末の利用が広がっている。身に付けるだけで脈拍や活動量などを測定できるウエアラブル端末は健康管理に役立つため、個人の装着者が増えている。各社とも高齢化が進む日本の有望市場である医療・介護領域を狙い、機能強化に取り組んでいく。(宮川康祐)

 東芝はリストバンド型の生体センサー「シルミーW20/W21」を近く発売する。従来製品は個人の活動量を測定し、生活習慣の見直しや体調管理に役立てることが主な用途だった。

 新機種は個人の身体の見守りだけではなく、高齢者などを対象にした安心見守り機能を追加したのが特徴だ。同W20は「SOSボタン」を搭載。緊急時にボタンを押せば通信機能によって事前に指定した人に連絡が届く。同W21はGPS機能を使いリストバンド装着者の軌跡管理が可能で、徘徊者の救助などに役立つ。

 NTTと東レが共同開発した機能素材「hitoe」も医療分野での活用が見込まれる。ナノファイバー生地に高導電性樹脂をコーティングした同素材は、生体信号を高感度に検出する。NTTの西條直樹研究企画部門プロデュース担当主任研究員は「医療分野への進出が大きな目標だ」と強調する。

 同素材は心電波形なども取得できるため、心電計の電極の代わりになる可能性がある。心臓疾患の診断で24時間心電図を測定するホルター心電計と組み合わせれば、煩わしさがある電極を体に付けずに着衣するだけで済む。

 セイコーエプソンもヘルスケア分野に着目する。エプソンのリストバンド型の端末は手首の血管にLED光を照射し、血流変化から脈拍数を計測する高精度センサーを搭載。脈拍と活動量から睡眠を自動検知し、睡眠の質を可視化する機能なども設けた。