高齢者見守りロボ、クラウドの力で賢く NTTデータ

2015年7月01日日経新聞

 NTTデータが、ロボットのコミュニケーション能力を生かして商用サービスにつなげるための取り組みを始めた。東京聖新会、ユニバーサルアクセシビリティ評価機構と共同で、コミュニケーションロボットによる高齢者支援サービスの実証実験を2015年3月24日に開始した。東京聖新会が運営する西東京市の特別養護老人ホームに入居している高齢者を対象に、ロボットとの対話による見守りサービスの実現可能性を検証する。

 今回の実験では、高齢者の生活環境にロボットベンチャー企業のヴイストンが開発したコミュニケーションロボット「Sota」と離床センサー、人感センサーを設置。「起床時の安否確認」「服薬確認」「認知症の早期発見」「夜間見守り」を行う(図1)。


図1  今回の実証実験で使用するヴイストンのコミュニケーションロボット「Sota」と検証する主なサービス(図:NTTデータの資料を基に日経エレクトロニクスが作成)

 例えば夜間見守りの場合、深夜の離床や外出をセンサーで検知するとSotaが高齢者に声を掛け、異常と判断すると施設の介護職員などに通知するという流れである。最近は離床センサーなどによる高齢者の見守りサービスが増えているが、コミュニケーションロボットによる声掛けを導入することで、高齢者の生活状況に沿ったより精緻な検知ができる可能性があるという。

■クラウドの力で高度なサービス提供

 今回の実験で使用するシステムの特徴は、ロボットによる音声認識や状況判断、外部センサーとの連携などをクラウド側で処理することである(図2)。


図2 実証実験のシステムの大まかな仕組み。音声対話機能やロボットの動作制御、センサー連携などの処理はNTTデータが開発したクラウドシステムで実行する(図:NTTデータの資料を基に日経エレクトロニクスが作成)

 高齢者の音声データや各センサーのデータは、NTTデータの技術開発本部 ロボティクスインテグレーション推進室が開発を進めているロボット用のクラウドシステム「クラウドロボティクス基盤」に送信される。クラウドロボティクス基盤では、収集したデータを解析して高齢者の生活情報を認識。Sotaを制御して、高齢者への声掛けや対話を促進する。

 NTTデータがロボットサービスの事業化に本腰を入れ始めた背景には、クラウド連携でロボットの低コスト化が見えてきたことがある。同社で開発を担当している宮崎智也氏は「ロボット自体の性能がそれほど高くなくても、複雑な解析処理をクラウド側で実行させることで高度なサービスを提供できる」と説明する。またクラウド側のシステムについても、オープンソースソフトウエア(OSS)を活用することで比較的低コストで構築できるようになったという。

 同社のクラウドロボティクス基盤は、オープンソースのデータベースや分析ツールなどにNTTのメディアインテリジェンス研究所が開発した音声認識エンジンなどを組み合わせたものだ。同じく開発を担当する小島 康平氏は「技術のオープン化が進んだことで、ロボットの普及に向けた(技術面での)環境は着実に整いつつある」と語る。

■高齢者の遠隔ショッピングにも

 今回の実証実験は、同年5月までの2カ月間にわたって実施した。6月からは在宅環境での実証実験も行い、サービスの有用性を検証した上で2016年度をメドに商用化を目指す。

 同社は、今回の実験で開発したクラウドロボティクス基盤を、ロボットによる高齢者向け遠隔ショッピングなど、幅広い用途に展開することも検討している(表)。