孤立死防げ 総力結集
2015年6月16日読売新聞
河内長野市は、独居の高齢者らの安否確認の手順を定めたマニュアルを新たに作った。きっかけは昨年11月に市内の住宅で起きた一人暮らしの50歳代男性の「孤立死」。警察への通報後、市がどのように関わるかについて具体的な取り決めがなく、発見の遅れを招いていた。市は安否確認の体制を強化し、再発防止に努めるとしている。(矢野彰)
昨年11月の50歳代男性のケースでは、新聞がたまっているなど異変に気付いた住民らが同9月、市の社会福祉協議会へ連絡。社協の職員や民生委員らが河内長野署員と男性宅を訪問したが、立ち入りなどはしなかった。約2か月後、署員が男性の親類に許可を得て部屋に入り、遺体を見つけた。
市ではこれまで、孤立死が疑われる場合、民生委員に訪問してもらい、必要に応じて警察や消防に通報するとしていたが、通報後の対応は決めていなかった。また、庁内で個人情報をやりとりする際のルールが曖昧で、戸籍や医療機関の利用状況など安否確認に必要な情報が共有できず、対応が遅れがちだった。
新しいマニュアルでは、市民からの情報提供の窓口を生活福祉課に一本化。高齢者や障害者など状況に応じて担当する課を決め、職員が実際に訪問して安否確認を行う。合わせて関係部署が連携し、戸籍や医療、水道の利用状況などの情報を集めて世帯の状況を速やかに確認することにした。
訪問した職員が郵便物や洗濯物が放置されているなどの異変を確認し、緊急性があると判断した場合は、警察や消防に連絡して対応を相談。その後も担当課が警察と連絡を取り合い、安否が確認できるまで継続して関わる。
同市の高齢化率は府内33市で最も高い25%(2010年)で、独居の世帯も全体の2割に近い。孤立死が増える懸念もあり、今後、郵便局や新聞販売店などと協力して見守りの体制を強化。独居世帯に町内会への加入を促すなどし、必要に応じて適切な福祉サービスにつなげるという。
市生活福祉課の小川祥課長は「高齢者や障害者だけでなく、公的支援にかからない人への対応も必要。警察や事業者とも連携し、孤立死を未然に防ぎたい」と話している。
◇個人情報利用 緊急時はOK
高齢者らが周囲に気付かれずに亡くなる「孤立死」が各地で相次いだのを受け、厚生労働省は2012年5月、安否確認をする際の個人情報の取り扱い方などについて自治体に通知を出した。
自治体は水道や医療機関の利用状況などの個人情報を把握するが、安否確認の際、関係部署でどの程度やりとりしていいのか判断がつかず、対応の遅れを招きかねない状況だったからだ。
個人情報保護法では、個人情報の目的外の利用は本人の同意なく認められないが、生命や身体、財産の保護に必要な場合は例外になる。同省は通知で、安否確認など緊急の場合は、福祉部局と水道、ガスなどの事業者との連携を図るよう対策強化を求めた。
合わせて住民からの情報提供を受ける窓口の一元化も通知。府内では豊中市が、60歳代の姉妹が孤立死した問題を受け、12年に専用の電話対応窓口を設置している。