高齢者感知センサー:遺品整理会社、惨状見かね開発 孤独死防止や救命に期待 直方 /福岡

2015年5月04日毎日新聞

 独居高齢者の動きを自宅内の赤外線センサーで感知、異常があれば離れて暮らす家族らに知らせる事業を、直方市植木の遺品整理会社「ハートアレンジ」が始めた。吉永健一社長(43)らが装置を開発した。昨年11月に始め、契約はまだ北九州市と中間市の計3世帯だが、孤独死を防ぎ、救命にもつながるとして期待される。【梅山崇】

 同社が2011年から遺品整理を手掛ける中、吉永社長らは遺体が腐敗した現場を何度も体験。後の掃除も大がかりになり、分譲マンション全体を解体せざるを得ないケースにも遭遇した。「遺族の心労も金銭的負担も非常に大きい。何とかしたい」と企画した。

 トイレやリビングなどに取り付けたセンサーで感知し、インターネット経由で同社サーバーに情報を自動送信する。一定時間感知しない場合や、トイレにこもりきりになった場合、切迫した事態が起きた可能性があるとみて、家族の携帯電話などに緊急メールを自動送信する仕組みだ。緊急メールを受けた家族が高齢者と連絡が取れない場合、同社スタッフが自宅へ急行することも。処置が早ければ救命にもつながる。契約エリアは同社から車で1時間圏内とした。

 就寝時はセンサーを切るなど、生活に合わせて設定を変えられる。家族は普段、パソコンや携帯電話によるアクセスで、いつでも動きを把握できる。

 初期費用として5万3800円かかり、保守管理料が月3300円。スタッフ急行は1回5000円かかる。

 利用している中間市の女性(77)は「最初は監視されているような抵抗感はあった。外出が長いと、電話があるのも面倒だった」。しかし、「裏返せばそれだけしっかり見守ってくれているわけで、外泊時も連絡すれば電話はかかってこない。利用してから安心感は高まった」と話す。

 吉永社長は「民生委員らの見回りも毎日はできず、高齢者や家族の不安に応えたかった。高齢者の自立にもつながれば」と話す。