IP電話:災害時の停電で安否確認難航のケース急増

2015年3月25日毎日新聞

 IP(インターネットプロトコル)電話や多機能電話などが一般家庭に普及し、災害時に停電すると通話できないケースが増えている。昨年末、徳島県の山間部で大雪のために停電が発生した際、孤立集落の家庭の多くがIP電話を利用していたため、安否確認が難航した。

 昨年12月5日から10日にかけ、大雪に見舞われた徳島県西部の三好市、東みよし町、つるぎ町の3市町で最大881世帯が孤立した。倒木などで電線が寸断され、停電が発生し、8割以上の世帯に普及していたIP電話が不通になった。携帯電話を持たない高齢者や、電池切れで通話できなくなった人もおり、多くの住民の安否が分からなくなった。

 陸上自衛隊による除雪作業と並行して自治体職員が安否確認のため一軒一軒を訪ねた。職員が陸自ヘリで集落に降りたケースもあった。電力の完全復旧まで6日間かかり、県の担当者は「これほど長期間の停電は想定できなかった」と話す。

 IP電話はネット回線を利用した通話サービス。一般の電話より料金が安くなる場合が多く、2003年ごろから普及し始め、総務省によると、昨年9月時点で利用数は3455万件に上る。

 徳島県は02年から「全県CATV(ケーブルテレビ)網構想」に取り組み、CATV回線を利用するIP電話も広がっている。防災無線を聞いたり、緊急時に役場と通話したりできる端末も設置できるため、県は「災害にも強い」とPRしていた。今回の大雪被害を受け、県と3市町は、住民の携帯番号の把握や衛星携帯電話の配備を検討する。

 固定電話が停電時に使えるかどうかは、機種によって異なる。「黒電話」などの旧式タイプは電話線から電力を得ているため問題はなかった。一方、IP電話のほか、ファクスやスキャナーの機能が付いた複合機は使えなくなる場合が多い。

 一般社団法人「情報通信ネットワーク産業協会」(東京都)は今年1月、市販の電話機が停電時に使えるかを調査した。通話機能のみの電話機は3機種全てが使えたが、留守番機能付きは29機種中10機種▽家庭用ファクス付きは27機種中23機種−−が通話できなかった。

 協会によると、コンセントからプラグを抜いても受話器から「ツー」という音が聞こえれば停電時も通話できるタイプだ。また、内蔵バッテリーで停電後も数時間は使える機種もあり、説明書などをよく確認することが大切だ。