お年寄り見守り、電話支援 松戸市、民間の取り組みに助成金

2015年3月25日朝日新聞

 松戸市内で始まった民間の高齢者見守りシステム「あんしん電話」を、同市が助成することになった。24日の市議会で予算案を可決した。現在は市内の半数以上の自治会・町会と、医療機関、NPO法人が協力して運用。行政の後押しで、孤独死の防止などさらに効果が期待される。県によると、民間の組織的な安否確認システムや、それへの行政支援は珍しいという。

 システムは同市常盤平の「どうたれ内科診療所」を運営する堂垂伸治・千葉大医学部教授(67)が2007年、高齢患者70人を対象に地域とつながりを保ちながら健康維持を図ろうと、業者とともに開発した。

 診療所に置いた「あんしん電話システム」(専用パソコン)に、高齢者の電話番号を登録。録音した医師や介護士ら親しい人の声で、定期的に安否や健康状態を尋ねる電話が自動的にかかる。これを受けた高齢者は(1)問題なし(2)体調不良(3)要連絡、のいずれかのボタンを押して回答する。(2)や(3)の場合、看護師や事務員が普通の電話で折り返し連絡し、状況を自治会・町会、ボランティアに連絡。自治会などが対応するというものだ。

 13年9月から、市内11地区のうち6地区の自治会・町会でつくる「地域見守り連絡協議会」(会長・斎藤正史野菊野団地自治会長)が普及させた。今の加入数は約400件で大半が一人暮らしの高齢者だという。

 あんしん電話の専用パソコンは約50万円で、市内7カ所の医療機関に設置され、5カ所で稼働している。ほか電話代や約200人いるボランティアの交通費や保険代などがかかるが、参加する高齢者の電話代は基本料金内で済む。

 連絡協議会に参加した6地区は、常盤平団地など大規模団地も多く、高齢者の孤独死など問題を抱える。

 協議会事務局を担当するNPO法人「コミュニティ・コーディネーターズ・タンク」の小山淳子・副代表理事によると、一人暮らしの65歳以上の市民は約2万人にのぼる。「元気なうちから、あんしん電話に参加して地域とつながりを持つようにしてほしい。そうすれば体調が悪い時に手を挙げやすい」と訴える。

 特に課題は男性の参加だ。12年に市内で孤独死した149人のうち、男性は約8割、116人を占めた。65~69歳では男性16人に対し、女性はゼロだった。あんしん電話の加入率も男性は少ない。「男性は仕事をやめると近所付き合いもなく、孤立することが多い」と分析する。

 市は約128万円を助成。市医師会を通じ、新たに参加する五つの医療機関のパソコン購入、電話料金、ボランティアの費用などを支援することになる。

 堂垂教授は「あんしん電話は対話型で、維持管理が安くできるのが特徴。地域の力を発揮するツールとして役立っている」。萩島賢治・市高齢者支援課長は「高齢者を見守る目は複数あったほうがいい。あんしん電話は自治会や医師会が協力する地域の目として頑張ってほしい」と話した。