電話で「IT弱者」も安心 災害時の一斉緊急連絡訓練/神奈川

2015年2月25日東京新聞

 災害時に住民に素早く緊急連絡をする新しい情報伝達システムの訓練が24日、横浜市金沢区で行われた。同区が試験的に導入を進めている仕組みで、ほぼ一斉に電話連絡し、返事を集約できるのが特徴。「IT(情報技術)弱者」にもなじみ深い「電話」を使うところがポイントだ。 (原昌志)

 システムでは、登録した固定電話や携帯電話の番号にコンピューターが一斉に電話をかけ、音声案内を流してプッシュ番号で返事を求める。高齢者らIT機器が苦手な人にも、分かりやすく伝わる手段として採用した。情報通信技術(ICT)企業と区の協働事業と位置付けた。

 訓練には、区内の町内会長百四十三人が参加した。「大型台風の接近が予想されています」との音声に続いて、町内に避難所を開設できるかどうか、プッシュ番号を選択するよう尋ねた。約三分で百四十三人全員に発信し、七十五人から回答があった。回答は区役所のコンピューターに即時入力され、画面に開設可能地域が一覧で表示された。
 ただ、電話はつながったが、留守番電話などで回答が得られなかったり、質問に戸惑って操作が完了しなかったりしたケースもあった。

 区は今後、参加者にアンケートして検証する。

 訓練に参加した同区六浦地区連合町内会長の興津昭夫さん(85)は「音声は聞き取りやすく操作も問題なかった。連絡時間が節約できれば、早く避難所開設の準備などに当たれる」と話していた。

 金沢区は、崖崩れが起きた場合に大きな被害が出る恐れがある市内の崖地百三十三カ所のうち、四十カ所を抱える。大規模地震時には津波被害も想定され、防災対策は主要課題となっている。高齢化率も今年一月現在で市平均の22・9%を上回る26・1%と高い。

 区はこれまで、災害時などは連合町内会長十四人に電話連絡し、さらに連合町内会長が各町内会長に電話などで知らせる方法をとっていた。昨年十月の台風19号の際は、町会長に伝わるまで夜通しかかった事例もあったという。

 訓練は三月にも実施する予定。林琢己区長は「将来的には一人暮らし高齢者の安否確認などにも活用できるのでは」と話した