50代孤立死 行政の盲点

2015年1月14日読売新聞

 河内長野市の住宅街で昨年11月、一人暮らしの50歳代の男性が自宅で死亡しているのが見つかった。2か月前には新聞受けに新聞がたまるなどの「サイン」があったが、市は対応を警察に任せきりにし、遺体の発見の遅れを招いていた。高齢者でも生活保護受給者でもない単身者に対し、行政の支援が行き届かない実態も浮かび上がっている。

 高台の閑静な住宅街にある男性の自宅を訪ねた。2階建ての住宅の庭木は敷地の外まで生い茂り、ポストからは郵便物があふれる。玄関扉には、「連絡下さい」と書かれた自治会からの貼り紙が残されていた。

 近所の住民によると、男性は両親と姉の4人暮らしだったが、両親と姉が亡くなり、ここ十数年は一人で暮らしていた。仕事はしていない様子で、ゴミ出しや買い物以外はほとんど外出もせず、近所付き合いもなかったという。

 住民らが異変に気がついたのは昨秋。8月下旬頃から新聞がたまり始めたため、不審に思った読売新聞販売店が9月13日、市の社会福祉協議会に通報した。社協の職員や民生委員らが河内長野署員と一緒に男性宅を訪れたところ、室内の電気はついていたものの、玄関や窓は閉まっていて、異臭なども確認できず、立ち入りなどはしなかった。

 しかし、男性がその後も姿を見せなかったため、住民が11月下旬、同署に通報。署員が男性の親類に許可を得て立ち入ったところ、遺体を発見した。男性は9月の最初の通報以前に死亡していたとみられるが、死因は不詳。遺体の引き取り手はなく、今後、市が火葬する予定だという。

 同市のマニュアルでは、孤立死などが疑われる場合、民生委員に訪問してもらい、必要に応じて警察や消防に通報すると決めている。だが、警察への通報後、誰がどのように関わるのかは定めていない。今回のケースでも、警察に任せたままで、職員による再度の訪問などはしなかったという。生活福祉課の担当者は「今後、市の関わり方を考える必要がある」とする。

 近所の男性は「もっと早く見つけてあげられたかと思うと残念だ。誰が悪いというつもりはないが、行政には再発を防ぐ仕組みを作ってほしい」と話した。

 ◇増える単身世帯 生活実態把握難しく

 高齢化や未婚者の増加などで、単身世帯は年々増えている。国勢調査によると、府内では1995年に89万7425世帯だったのが、2010年には136万7908世帯に。周囲に知られずに孤立死するケースも増えているとみられるが、孤立死には明確な定義がなく、正確な統計もないのが現状だ。

 また、高齢者や生活保護受給者などについては、自治体がある程度、生活状況を把握している場合もあるが、それ以外の単身者については情報収集が難しいという実態もある。

 富田林市でも、介護保険の利用状況などから、高齢者の安否確認などを進めるが、地域福祉課の担当者は「特に50~60歳代の独居男性については、難しい。公的支援にかからない人の情報をどうやって集めるかは課題だ」と打ち明ける。

 桃山学院大の松端克文教授(地域福祉論)は「独居世帯が増える中、孤立死の実態把握を早急にすべきだ。男性のケースは自力で生活できなくなっていた可能性もある。支援は高齢者や障害者などに向けられ、そうでない人は漏れがちだ。生活の困り事を何でも相談できる窓口を置いたり、専門の相談員を活用したりすることが有効ではないか」と指摘する。