遠くの親を見守るために 地域の手助け、活用策いろいろ

2015年1月2日朝日新聞

 日常の困りごとの手助けや見守りをしてくれる地域のサービスが広がっています。離れて暮らす高齢の親のために、子がその利用を考えたり準備したりできます。年末年始、久しぶりに一緒に過ごす人も多いでしょう。日頃は遠くにいる親にどんな支えが必要か、考えてみませんか。

■話し相手・ゴミ出し・電球交換…

 「指定の集積場所まで運べない」という高齢者らの声を受け、横浜市はゴミの戸別収集サービスをしている。

 収集日に自宅の玄関前などに取りに来てくれる。名古屋市や大阪市など多くの自治体で同様のサービスがある。

 横浜市での利用は約5千世帯。5年前の2.5倍に増えた。申し込みの8割がケアマネジャーからで、次に多いのが親族だ。そのほとんどが親と別に暮らしている子だ。「ゴミを運ぶのがつらそう」などと、親の異変に自身で気づいたり近所の人に言われたりしたのがきっかけという。

 利用の前には市職員が本人と面談し、サービスが必要か確認する。分別ができない人にはシールを配り、貼られたゴミはそのまま収集する。

 2010年度から、ゴミを出していない場合は回収にいった職員が安否確認の声かけをしている。孤独死が社会問題となったためだ。昨夏には玄関で倒れていた90代の女性を見つけ、救急車を呼んだ。女性は「3日前から動けなかった」と話したという。

 全国で65歳以上の高齢者のいる世帯の過半数が単身や夫婦のみの世帯だ。万が一に備え、各地で「見守り」対策が進む。

 転倒や急病に備える「緊急通報システム」は自治体の大半が導入している。例えば、ペンダントのボタンを押すと警備会社などに通報がいき、子の連絡先を知らせておけば必要に応じて連絡が届く。

 各地域の社会福祉協議会(社協)も高齢者らの安否確認や声かけ、日常生活の手助けなどをしている。

 東京都中野区社協の支え合い事業を利用しているのは、つくば市に住む安岡真由美さん(55)だ。2年半前、中野区に1人で暮らす母の坂内芳江さん(83)のために頼んだ。母が風邪をこじらせ、やせたときに今後のことが不安になった。しかし、忙しい時期もあり、頻繁に訪ねるのは難しい。

 事業の協力会員(住民ボランティア)が週1回、見守りを兼ねて1時間話し相手をしてくれる。1時間800円、年会費3千円だ。現在は介護保険サービスも併用する。「1人でぽつんといるより安心」と坂内さん。安岡さんは「不安が和らいだ」と話す。

 中野区社協では、困りごとに住民ボランティアが無料で応じる事業もしている。今年度上半期の利用は85件。多いのは電球交換やカーテンの取り付けだ。脚立に上るのが危なかったり、ずっと上を向いているとめまいがしたりして作業ができないと訴える高齢者が多いという。

■「異変」感じたらメモを

 高齢の親は、自治体や地域のサービスを調べたり、手続きをしたりすることにハードルを感じることも多い。

 「インターネット検索などに慣れた子が情報を集めるのも親への支援の一つ」と、離れた親をケアする人の情報交換を図るNPO法人「パオッコ」理事長の太田差恵子さん(54)は話す。親が暮らす自治体のサイトなどから情報を得ておけば、親が困っていることに気づいたとき、サービスの利用を勧めることができる。

 高齢者向けサービスをまとめた冊子を送ってくれる役所もある。情報収集先には、社協や地域包括支援センターもある。

 親の異変に気づくには、「普段からコミュニケーションを」と太田さんは強調する。電話やメールで「遠慮しないで言ってね」と添えて。「心配させまい」と思う親は多く、めったに連絡のない子にはなおさら言いづらい。

 気になった親の様子は書き留めておこう。違和感を感じても、日々の生活の中で忘れてしまうからだ。記録してためることで、手助けが必要だと気づける。「早めに手立てを講じることで、親の健康悪化を食い止められる。結果として、自分の生活スタイルの維持にもつながります」(田中陽子)