高齢期の住まい(中)何を重視 決めて探す

2014年12月19日読売新聞

 高齢者向けの住まいの中から、自分に合う所を探すにはどうすればよいのか。

 半年以上、住み替え先を探してきた東京都板橋区の高島平団地に住む女性(71)は、今年の夏、新たな住まいを決めた。同じ団地内に今月オープンしたサービス付き高齢者向け住宅「ゆいま~る高島平」だ。

 女性は昨夏に夫を亡くし、その後は団地の中の3DKの賃貸住宅で一人暮らし。子供はおらず、「もし倒れたら」と不安を感じて介護付き有料老人ホームを探し始めた。

 実家が都内にあり、まずはその近隣で、複数のホームの見学会に参加した。

 あるホームは、建物が豪華で入居者用のジムもあったが、利用する人は誰もいない様子だった。別のホームは、入居者が皆、車いすだったりつえをついていたり。平均年齢は80歳を優に超え、「入居しても友達はできないだろう」と感じた。そして、負担できる価格の部屋は、どこも狭かった。

 女性の楽しみは、都心での芝居見物や友達との食事。見学したホームは、駅から遠いなど気軽に出かけにくい立地が多いのも気になった。

 「ゆいま~る高島平」は、株式会社「コミュニティネット」(東京)が、都市再生機構(UR、旧住宅・都市整備公団)から賃貸住宅1棟内の空き部屋30戸を借り受けて運営している。段差などがないバリアフリーになっており、隣の棟1階の事務所にはスタッフが日中常駐する。入居者には携帯電話のような端末が渡され、毎朝、スタッフに発信する。発信がない場合にはスタッフが安否確認を行う。いざという時には端末のひもを引けば警備会社のスタッフが24時間、駆けつける。

 介護サービスはない。必要になれば外部の事業者に頼むことになる。

 女性は商店街で貼り紙を見て「ゆいま~る」を知り、「ここなら、今までの生活を変えずに暮らせる」と決断した。

 部屋は1DK約42平方メートル。月々の負担は、家賃と共益費、安否確認などのサービスに対する「生活支援サービス費」3万6000円を合わせて14万円弱。これまでの家賃より2万円ほど高くなるが、その他の生活費を含め、年金でほぼ賄える。食事サービスはなく、別の民間団体が運営している団地内のカフェなどを利用する。

 「最初は不安が先に立って、『最期までいられるところに』と思ったが、ホームを見学するうちに『先のことだけ考えるのは寂しい』と考えが変わった。介護が必要になったら、その時考えます」と女性は話す。

 「まだ元気な人が、先々の介護や看取みとりのことだけを考えて住まいを選ぶのはお薦めできない。サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなど住まいの類型にこだわらず、『その住宅が自分に合うか』という観点で探すといい」と、住み替えの相談に乗っている「高齢者住宅情報センター」東京センター長の小泉奉子ともこさんは言う。

 安否確認サービスはほとんどの高齢者向け住宅に共通している。あとは「街中か、自然豊かな場所か」「バリアフリーになっているか」「食事がついているか。おいしいか」など、人によって評価する点は異なる。

 また、「生活支援サービス」などの名目で提供されることの多いゴミ出しや掃除、服薬管理などのサービスについては、実施しているかどうかや、基本料金に含まれるかどうかも確認が必要だ。

 「万人に共通して合う住まいはありません。自分が負担できる費用の額を踏まえ、『何を重視するか』を決めて探すことが大事です」