公営住宅、4分の1が単身高齢者 孤独死1300人超す

2014年12月12日朝日新聞

 全国の公営住宅で、一人暮らしの高齢者が全世帯の4分の1を占めることが、47都道府県と20政令指定市を対象に朝日新聞が実施した調査でわかった。著しい「単身高齢化」を背景に孤独死も多発しており、昨年度1年間では計1320人に上っていた。

 公営住宅は1980年に高齢者らの単身入居が認められ、96年以降、収入基準が見直され、より多くの低所得者が入居しやすくなった。専用の入居枠を設けるなど配慮している自治体もあり、お年寄りの「住まいのセーフティーネット」としての役割が強まっている。

 調査は6~7月に実施、4月1日時点の入居状況などを聞いた。65歳以上の独居世帯数は「把握していない」として答えなかった愛知など6県をのぞき、計約29万。この6県をのぞく全入居世帯の24%を占めた。

 割合が高かったのは、岡山市(37%)、神戸市(35%)、横浜市(32%)など。全入居者の平均年齢では、さいたま市(26%)が65歳近くで最も高かった。

 直近2010年の国勢調査では、65歳以上の単身世帯は全世帯の9%。国の社会保障・人口問題研究所は35年には15%まで増えると推計しており、公営住宅はそれを先取りした形だ。

 孤独死は、少なくとも36都道府県と19市で起きていた。東京都337人(管理戸数25万7千戸)や大阪府187人(13万8千戸)、名古屋市74人(6万1千戸)など戸数が多い都市部で多い。8県は「孤独死はなかった」と答え、兵庫県など3県1市は集計していないという。

 ただ、孤独死の定義は「発見まで1日以上かかったもの」など自治体によって異なる。東京都と神戸市(177人、5万2千戸)は「自殺か病死かはっきりしない場合もあり、厳密には分けられない」として、集計には自殺者を含む。29人と答えた福岡市(3万2千戸)も自殺者を含む可能性があるという。

 年代がわかる例をみると、70代が34%、60代と80代が25%ずつだった。

 調査した47都道府県と20指定市の公営住宅は計約139万戸で、約125万世帯が入居中。公営住宅には市町村営や被災地に建てられる復興住宅もあり、全国で約217万戸(12年度末)。今回の調査対象は6割強にあたる。1995年の阪神大震災では復興住宅での孤独死が13年までに800人を超えており、東日本大震災の被災地でも孤独死が懸念されている。(山田史比古)


 <公営住宅〉 低い家賃で低所得層に住宅を提供することを目的に、都道府県や市町村が建設し、国も整備費などを一部補助している。高度成長期には、主に持ち家を所有する前の働く世代向けに建てられた。