単身高齢者、20年後1.6倍770万人に 孤立を防げ!
2014年11月25日産経新聞
増え続ける1人暮らしの高齢者が社会から孤立するのを防ごうと、地域や行政が見守る取り組みが広がっている。とりわけ地域コミュニティーが薄れつつある都市部でのサポート事例をリポートする。
◆レストランに集う
東京都大田区の「おおた高齢者見守りネットワーク」(愛称・みま~も)は、大田区地域包括支援センター入新井「さわやかサポート入新井」が核となり、地域の商店街や介護保険事業者などの協力を得て、平成20年1月に生まれた。以来、独自の取り組みを精力的に続けており、地域主導の見守りの取り組みの好例として全国で注目を集めている。
活動は多岐にわたる。商店街や地域で営業しているさまざまな企業のスタッフらが、顧客や近隣住民の「異変」に気づき、それをセンターに知らせる仕組みを作った。
さらに地域の空き店舗などを利用して、住民や商店街主導のイベントを行う「みま~もステーション」や、地域の高齢者が気軽に集える「みま~もレストラン」も営んでいる。多くの人が顔見知りになることで、地域の絆を強めることが目的のひとつだ。
◆相互メリットを
高齢者への「識別番号つきキーホルダー」の配布も進めている。キーホルダーには同センターの電話番号も併記。万一のときは、現場に駆けつけた医療スタッフなどがキーホルダーを持った本人の個人情報をセンターから受け取り、医療施設や関係者への連絡をスムーズにする。
見守りに協力する地域の事業所は85カ所。みま~もステーションでは、年間230もの講座が開かれている。キーホルダーの配布数は区内の高齢者15万人中2万人を超える。
取り組みを主導してきたセンター長の沢登久雄さんは、成長の秘訣(ひけつ)について「商店街や地域の企業の方に協力してもらうには、負担感や義務感だけだと長続きしない。一緒に取り組んでもらうことで、街がにぎわうといった相互のメリットを意識することが重要だと実感しました。だから『見守りの枠組みをつくる』というより、『まちづくり』という感覚を大事にしています」と話す。
◆行政の多重支援
高齢者約15万人のうち、「1人暮らし」や「高齢者のみ」で暮らす人が7割近くに及ぶ東京都練馬区。20年から「高齢者見守り3事業」という多重的な取り組みを続けている。
(1)週に1回、電話で安否確認する「高齢者福祉電話」
(2)専門のボランティアが週に1回程度訪れる「高齢者見守り訪問」
(3)緊急連絡用のボタンがついたペンダントを月額400円で貸し出す「緊急通報システム」
-だ。24年度の訪問事業の利用者は延べ417人。今年度には1千人程度まで事業を拡大していく計画だ。
区では、「民生委員や、町会・自治会、老人クラブ、NPO、介護サービス事業者などの連携を深め、さらに、電気、水道、新聞販売店など、高齢者と接する機会を持つ事業者に、高齢者見守りのネットワークに加わるよう働きかけていく」としている。
■単身高齢者は20年後1.6倍 770万人の見通し
見守りサービスの普及の背景には、単身世帯、とりわけ高齢者の単身世帯が爆発的に増加しているという事情がある。さらに、地域の絆が失われているという事情が、サービスの普及を後押ししている。
昭和55年には総世帯の19.8%に過ぎなかった単身者は、平成22年には32.4%にまで増加。47年には37.2%にまで増えると推計されている。
背景にあるのは、生涯を独身で過ごす人の増加。さらに、結婚しても子供を持たない人や、子供がいても「世話になりたくない」と考えて配偶者が死亡したあと1人で生活する人が増えているためとみられる。
65歳以上の高齢者に目を向けると、単身者は22年で480万人。これが47年には約770万人と約1.6倍になる見通し。特に1人暮らしの高齢女性は500万人を超え、全高齢者の23.4%を占めるとみられる。
今後、ますます増えていく単身高齢者。孤独死も増加する可能性が高く、見守りサービスの充実が求められる。