注目集める「サービス付き高齢者向け住宅」 質にばらつき、入居前に確認を

2014年11月18日産経新聞

 バリアフリーの住まいでスタッフが安否確認などを行う賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が増えている。原則60歳以上なら入居でき、高額な入居一時金がかからないなどのメリットが注目されるが、一方で、サービスの内容や質にばらつきがあるのが現状だ。専門家は「入居前にサービス内容をよく確認してほしい」と呼びかけている。(岸本佳子)

最期まで住みたい

 大阪市住吉区の「グルメ杵屋社会貢献大領の家」。全50戸の居室をもつサ高住だ。介護職員が24時間フロアに常駐し食事や入浴などの介護を行う「介護型」と「住宅型」。住宅型は介護職員の常駐はないが、各部屋に24時間対応の緊急通報用のボタンを設置している。入居時は元気でも介護が必要な状態になれば、同じ建物内の訪問介護事業所か、外部の事業所を選んでサービスを受けることができる。

 坂本ヒサ子さん(79)は住宅型に入居して1年2カ月。以前はマンションで1人暮らしだったが、体調を崩し、心配する周囲の勧めもあって入居することを決めた。

 「1人で暮らしていたときは、孤独死したらどうしようと考えたこともある。今は職員さんに声をかけてもらったり、同じフロアの人と話したり。安心感があります」と笑顔を見せる。

「住宅型」の場合、家賃は5万5千円から、共益費1万5千円、安否確認・生活相談費用として5千円など。食事も朝食350円などで注文でき、自炊も可能。入居時に必要な敷金は家賃の3カ月分だ。

 所長の大岩輝之さん(38)によると、「身寄りがなく将来が不安」「家族に迷惑をかけずに暮らしたい」と入居するケースが多く、最期まで住み続けたいと希望する人も少なくない。今年春には90代の末期がんの女性を看取(みと)ったという。

サービス確認を

 サ高住は、高齢者の単身世帯や夫婦世帯の増加にともない、安心な住まいを提供しようと平成23年から国が整備を推進。バリアフリー構造▽専用部分の床面積が原則25平方メートル以上▽少なくとも日中はケアの専門家が常駐し安否確認と生活相談サービスを行う-などの要件を満たせばサ高住として登録できる。建設費補助や減税措置などが受けられるため、さまざまな業種から参入が相次ぎ登録物件は急増。16万1517戸(10月末現在)に上る。

 ただ、安否確認や生活相談サービスは必須だが、それ以外の食事や医療、介護などのサービスには規定がなく、事業者が独自に行っている。中には、利益を得るために必要以上の介護サービスを提供したり、入居者が求める「看取り」に対応できないケースもあるなど課題も浮き彫りになっている。

 国は今年9月、有識者による検討会を設置。実態調査に乗り出すとともに、来春までに今後のあり方や対策をまとめる。

 高齢者の住宅に関する相談を受けている高齢者住宅情報センターの米沢なな子・大阪センター長(61)は、「サ高住は現状では、玉石混交の状態」と指摘する。「施設を選ぶ際にはどのようなサービスが受けられるのかをきちんと確認してほしい」と話している。

 経営者の理念も大切

 高齢者住宅情報センターの大阪センター長、米沢なな子さんに、サ高住を選ぶ際に気をつけたいポイントを聞いた。

 付随するサービス内容の確認はしっかりと。例えば「医療との連携」をうたっていれば、夜中でも対応してくれるのか、入院の付き添いはしてもらえるのか、などを聞いてみる。終(つい)の棲家(すみか)と決めるなら、認知症になったり要介護度が高くなったり、看取りの時期でも受け入れ態勢は整っているか、確認しよう。「経営者がどんな理念をもっているのか、ということも大切。その人らしい暮らしを送る上で影響してきますから、ぜひ聞いてみてほしい」とアドバイスしている。