電力の世界をITで変革する試み、全国1万4000世帯にHEMSを9月から導入

2014年09月02日スマートジャパン

 NTT東日本など電話会社3社とパナソニックが中核になって、全国4つのエリアを統合した家庭向けのエネルギー管理サービスを開始する。合計1万4000世帯にHEMSを導入したうえで、全国共通の情報ネットワークを構築して、省エネや見守りなどのサービスを実施する計画だ。

 このプロジェクトは経済産業省が2014年度に40億円の国家予算を投入する「大規模HEMS情報基盤整備事業」である。事業の推進母体はNTT東日本、KDDI、ソフトバンクBB、パナソニックの4社が幹事を務めるコンソーシアムに決まっている。大手の電話会社3社を中心に、IT(情報技術)を生かした新しいエネルギー管理サービスを提供して全国レベルで節電を推進する構想だ。

 すでに実施地域には東北エリアから福島県の会津若松市、中部エリアから静岡県の静岡市と三重県の桑名市、九州エリアから福岡県のみやま市が決定した。さらに関東エリアからも東京・神奈川・千葉・埼玉の複数の都市が選ばれる予定だ。全体を合わせて約1万4000世帯にHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を設置して実施する国内で最大規模のエネルギー管理サービスになる。

 全国共通のインフラを構築して、各家庭のデータを集中的に処理してサービスを提供できるようにする。メーカーによって仕様が違うHEMSからのデータでも同様に処理できるように共通のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用意する計画だ。家電機器とHEMSのあいだは国内標準の通信プロトコルである「ECHONET Lite」を採用する。

 HEMSを導入する家庭の募集を9月から開始して、2015年3月までに1万4000世帯に設置を完了する予定である。並行して情報基盤の構築を進めて、2015年4月からHEMSを活用した各種のサービスを開始する。単なる電力使用量の見える化にとどまらず、電力の利用状況を監視して子供や高齢者の見守りサービスも提供する想定だ。その点でプライバシーに配慮したデータの収集・管理・加工の仕組みが重要な課題になる。

 この事業が終了する2016年4月には、家庭を対象にした電力の小売全面自由化が始まる。安価な電気料金とともに、さまざまな生活支援サービスを提供する会社が増えて、競争が活発になることが予想される。電話会社はITを駆使したサービスに加えて電話とのセット料金を打ち出して既存の電力会社に対抗する見通しだ。