タブレット端末で仮設の高齢者見守り支援/宮城
2014年08月28日朝日新聞
仮設住宅で暮らすお年寄りにタブレット型端末を持ってもらい、見守り活動に活用する実証実験を、東北学院大の坂本泰伸准教授(情報工学)が仮設自治会などと協力して進めている。高齢化が進む街で、孤立や孤独死を防ぐ仕組みづくりをめざす。
7インチ画面の端末はNTTドコモが提供。坂本さんが研究室の学生らと開発したソフトが組み込まれ、仙台市のあすと長町仮設、岩沼市の里の杜仮設に単身で住む高齢被災者約20人が、この春から持つ。端末の操作法を説明したのは、孫のような学生たちだ。
毎日、起きた時や夜寝る時、外出時や相談事がある時などに、タッチパネルに触れる。血圧や体温などもお年寄りが入力。情報は自治会役員や坂本研究室のパソコンに届き、「最近寝るのが遅い」「ここ数日出かけていない」といった一人ひとりの状況が把握できる。必要に応じて生活支援員やNPOの「見守り人」が訪ね、声をかける仕組みだ。
仙台市は、仮設住宅の高齢者の部屋に緊急通報装置を設置し、ボタンを押せば警備員が駆けつける態勢をとる。だが、あすと長町の自治会長、飯塚正広さん(53)によると、誤って押す例が多く、有効に使われていないという。IT会社員の飯塚さんは「非常時だけ使う機械より、普段からなじんでもらう方がいい」と考え、坂本さんらと一緒にシステムを考えた。
坂本さんは「機械による見守りではなく、あくまで地域の人とコミュニケーションをとるための道具」という。町内会役員や民生委員、介護事業者などが連携した見守り態勢のモデルづくりをめざす。高齢者の生活リズムを長期間分析し、認知症の早期発見につなげることも研究課題という。
あすと長町仮設(約180世帯)は、住人の67%が60歳以上。飯塚さんは「仮設は超高齢化社会の縮図。ここで成功すれば、災害公営住宅や一般の団地でも実用化できるはず」と話す。(石橋英昭)