空き家問題、実は都心部こそ深刻

東京は需給ミスマッチ!独居高齢者の住みかはどこに

2014年08月21日週刊東洋経済

 およそ7軒に1軒が空き家――。

 7月末、総務省は5年おきとなる「住宅・土地統計調査」を公表した。2013年の日本の空き家は約820万戸、総住戸に占める割合は13.5%といずれも過去最高を記録した。注目を増す空き家問題は「地方の話」ととらえられがちだが、実は都心部こそ深刻だ。

 東京都の空き家率は2013年で11.1%。全国平均を下回るが、それはあくまで「率」の話。母数が多い分、空き家の実数でみると全国でダントツの多さなのである。しかもそのうちの約7割が都心部の東京23区に集中している。

 一方、東京では住宅のミスマッチが起きている。単身世帯の増加に住宅供給が追いついていないのだ。特に顕著なのが一人暮らしの高齢者。東京では全世帯の約46%を単身者世帯が占め、そのうち約4軒に1軒に65歳以上の居住者がいるが、一人暮らしの高齢者が安心して住めるすまいは少ない。空き家が増え続けているにもかかわらずである。

生活支援で大家の不安を解消

 新宿区下落合にある高齢者向け自立援助ホーム。24部屋は一人暮らしの高齢者で満室だった。入居者の男性(77)は「都営住宅に何度も申しこんだが落選続きだった。住み慣れた新宿に暮らし続けることができてうれしい」と語る。

 空き家状態だった共同住宅が、高齢者向けホームに生まれ変わったのは10年12月。運営するのはNPO法人「自立支援センターふるさとの会」だ。

 ふるさとの会は1990年から単身の生活困難者の支援を続ける。単身困窮者が地域で住み続けるためには住宅支援が不可欠。その中で空き家の活用に行き着いた。現在ふるさとの会の支援をうける単身困窮者は1134人。約7割が60歳以上で、ほとんどが生活保護受給者だ。

 空き部屋があったとしても、一人暮らしの高齢者はなかなか部屋を借りられない。貸す側からすれば、家賃の滞納や種々のトラブルが心配だからだ。孤独死のリスクもある。

 そうした懸念を払拭するのが、ふるさとの会の役割。賃料滞納があった場合に関連会社を通じて支払いを保証したり、トラブルの早期発見・対応も行う。下落合の自立援助ホームのように、空きアパートを一棟まるごと借り上げるケースもある。同ホームには24時間365日体制で職員が常駐し、食事の提供や日常生活の支援、服薬の管理まで行う。

 ふるさとの会常務理事の滝脇憲さんは「いかに大家さんの不安を解消するか。それさえできれば、単身高齢者でも借りられる空き家は多い」と語る。重要なのは、単なるマッチングではなく、生活支援や見守りといったソフトを同時に提供することだ。現在では空き室に悩む貸し主側から依頼を受けて、アパートの管理を一括受託する案件も出てきた。

活用次第で地域の資産になる

 ただ、一人暮らしの高齢者は孤立することも多い。それを防ぐためには、地域とのつながりが必要になる。

 ふるさとの会は2013年1月、新宿区大久保にあるビルの空きスペースを活用し、誰もが入れるカフェを設置した。利用者にとっては気軽に相談する機会が増え、地域との交流の場が持てる。滝脇さんは「場の力は大きい。高齢者が地域に住み続けるにはこうした地域での居場所作りが必要になる」と指摘する。

 今年度から厚生労働省は、低所得高齢者の住まい確保や見守り・生活相談を支援する事業を始めた。そこには医療や介護施設では対応できないすき間を地域で埋めるという発想もある。今後東京を始めとした都市部では医療・介護施設の不足が予想されており、地域挙げての取り組みが必要になってくる。

 空き家は活用次第で、地域の資産に変えられる。今後空き家と一人暮らしの高齢者の急増が同時に見込まれる中で、両者をどう結びつけるか。地域の智恵が問われている。