独居高齢者に安心を 被災世帯に緊急通報機器 陸前高田市が新事業
2014年08月21日東海新報
東日本大震災で被災し、仮設住宅などで暮らす独居高齢者の支援策として、陸前高田市内で新たな見守り支援サービスが始まった。一人暮らし世帯に無償で携帯通信機器を貸し出し、急病時の迅速対応などにつなげる事業。看護師による健康相談も重視し、週1回利用者と電話で連絡をとるなど、体調変容の早期発見も図る。市では各仮設住宅で市社会福祉協議会が開催している「お茶っこサロン」などを活用しながら、周知を図っている。
市はストレスがたまりがちで、体調不良への不安や生活全般の悩みをかかえる高齢者の不安軽減策として事業化。東京都に本社を構えるアズビルあんしんケアサポート㈱(國井一夫社長)が受託した。同社は介護サービスや介護予防、健康・福祉型緊急通報サービスなどを展開している。
事業対象は市内に居住し、震災で家屋が全壊または半壊以上の被害を受け、一人暮らし(日中のみの世帯も含む)で緊急通報用の携帯機器をとくに必要としている65歳以上の住民。
仮設住宅では固定電話回線を引かない住民も多い中、携帯型端末を活用したモバイル版緊急通報サービス「あんしんペンダント」を使用する。
ボタンを押すと東京と盛岡にあるコールセンターに通報され、登録されている近隣の協力者や消防署などに連絡が入る。コールセンターでは近況確認として利用者に週1回連絡。センターには看護師をはじめとした専門職が常駐し、利用者の健康をチェックする。
同社や市によると、市内53カ所の仮設住宅団地に暮らす住民は6000人を超えており、このうち65歳以上の高齢者は約2000人。高齢者のみの世帯も1000世帯を超え、このうち独居世帯は約250世帯となっている。
平成23年の発災以降、市社協の生活支援相談員らが市内の仮設住宅を回り、被災者の福祉・生活面での課題を把握。支援を必要としている人々には必要なサービスが利用できるよう、専門職や関係機関につなぐ活動を行っている。
一方で団地によっては各町から被災者が集まっており、気軽に声をかけられる知人が少ない中で暮らす高齢者も。被災を免れた市内陸部にも一人暮らしは多く、市全体では今年3月時点で1676人に及ぶ。震災前と比べ1・5倍近くに増えた。
市側は「緊急時の対応はもちろんだが、看護師などの専門職を行う健康相談にも期待している。孤立しがちな高齢者や被災された方々に安心感をもたらす見守り支援を、市や関係機関と連携して実施できる」と、メリットを強調する。
市は先月から、仮設住民や市社協生活支援相談員らに事業を説明。すでに10人ほどが利用を始めたという。問い合わせは長寿社会課高齢福祉係(℡54・2111内線201)へ。