一人暮らしの高齢者、自宅閉じ込め増加 熊本

2014年07月30日熊本日日新聞

 1人暮らしの高齢者が急病などで倒れ、外部と連絡できず自宅内に閉じ込められる事故が、県内で増えている。室内の温度が上がる夏場の時季、発見の遅れは命にかかわるだけに、親族との緊密な連絡や近所との付き合いが欠かせない。

 熊本市消防局消防課によると、6月下旬、自宅アパートで、しびれを感じて動けなくなった60代の男性が、知人を通じて119番通報。駆け付けた救助隊員が扉のカギを壊して救助し、脳梗塞の疑いで救急搬送した。

 同消防局は今年上半期(1~6月)に16人を救助したが、うち4人は既に死亡。昨年は32人を救助したが、8人が死亡していた。ほとんどが独居の高齢者だった。

 八代広域消防本部は今年上半期に8人(うち2人死亡)を救助し、昨年1年間に救助した4人を大きく上回った。有明広域消防本部も上半期は4人(うち死亡1人)で、既に昨年1年間と同数だ。

 県消防保安課の集計では、県内で2012年に救助されたのは計30人で、前年の21人から1・4倍に増加。独居高齢者世帯の増加が主因とみられる。

 救助された中には、脳梗塞や骨折などで動けず、意識はあっても電話をかけられなかった高齢者もいる。熊本市では「新聞が数日分たまっている」「呼び鈴に応答せず、電話も出ない」など親族や近所の人、民生委員などが異変を察知し、通報した例が多いという。

 県高齢者支援課によると、10年国勢調査で県内の独居高齢者世帯は約6万9千世帯、全世帯の約10%を占める。国立社会保障人口問題研究所の推計では、20年に9万世帯(13%)になる。

 県内各地で地域の「見守り」を強化する取り組みも増えているが、急病時に対応するのは難しい。熊本市消防局は「電話の子機、携帯電話を枕元に置いて寝るなど、万が一の備えに努めてほしい」と呼び掛けている。(横山千尋)