見守りか盗難対策か 小型GPS、用途で変わる選び方
2014年07月20日日経新聞
いざというときに備えて、子供や高齢者、自転車やバイク、クルマなどの場所を常に把握しておきたいというニーズは年々増えている。スマートフォン(スマホ)と連係できる小型のGPS(全地球測位システム)端末があれば、離れた場所からでもそれらの位置を確認できる。そこでソフトバンクモバイルとKDDI(au)から相次いで発売された、小型GPS端末の実力を検証した。
ソフトバンクの「みまもりGPS 201Z」は液晶ディスプレーがない、シンプルな製品。本体にはボタンとLED(発光ダイオード)ランプだけを配置している。
auの「あんしんGPS」は、白色有機ELディスプレーを搭載し、バッテリー残量や歩数、消費カロリーなどの情報を表示できるのが特徴だ。加速度センサーを搭載していることも魅力だが、ボディーサイズはコンパクトだ。
「見張り」機能持つあんしんGPS
両社ともGPS機能と通話機能を搭載した子供用ケータイも展開している。通話機能を省いたGPS端末は、ケータイの持ち込みが禁止されている学校でも使える他、小型化による新たなニーズの掘り起こしという狙いもあるようだ。
「みまもりケータイのユーザーは、子供が4割で大人とシニアが3割ずつ。大人のユーザーにさらに活用してもらうため、ジョギングや旅行などで活用できるGPSロガーとしての使い方を提案した」(ソフトバンク)という。緊急時だけでなく普段使いもできるGPS端末という立ち位置だ。
対するauのあんしんGPSは、加速度センサーの搭載による振動感知を利用した見張り機能が特徴だ。例えば、クルマのドアポケットに入れておけば、ドアを開ける振動も感知できるという。「振動レベルは使い方に応じて10段階で設定できる。振動感知後に連続で位置測定すれば盗難車の追跡も可能」(KDDI)。
行動エリアの確認機能に差
実際にこれらのGPS端末を持って移動したり、子供のかばんに入れるなどしたりして検証した。どちらの製品もスマホの専用アプリから位置測定を指示すると、1分程度で端末の場所を把握できた。
特に便利に感じたのが、指定したエリアへの出入りを通知する機能だ。子供が自宅付近のエリアを出たり、学校近辺のエリアに入ったことを手元のスマホで確認できるのは安心感がある。ソフトバンクのみまもりGPS 201Zは10カ所までエリア登録できるが、auのあんしんGPSは1カ所だけ。あんしんGPSは子供の行動をエリアごとに把握するという目的には向いていない。
位置特定精度はソフトバンクが上
使っていて特に気になったのが、あんしんGPSの位置情報のずれだ。あんしんGPSはGPS衛星と3G回線の電波により位置を測定する仕組みで、特に地下街や建物の中では位置情報が数百メートルのレベルでずれてしまうことがあった。
一方、ソフトバンクのみまもりGPS 201ZはGPS衛星や3G回線の他、街なかの無線LANの電波も利用して位置情報を測定する仕組みを採用。そのため、把握できる位置情報が実際の場所と大きくずれることは少なかった。GPS端末の本質である位置情報の精度で、明確な差がついてしまった印象だ。
自転車やバイク、クルマなどの防犯対策を重視するのなら、振動感知ができるauのあんしんGPSが選択肢になる。だが、位置情報を正確に把握するというGPS端末の本来の目的ならソフトバンクのみまもりGPS 201Zを選ぶべきだ。