レーダーで高齢者見守り CQ-Sネット、LED電球に装置
2014年07月10日日経新聞
システム開発のCQ-Sネット(横浜市、斎藤光正社長)はレーダーで住宅の高齢者の安否を確認する装置を開発した。発光ダイオード(LED)電球に装置を内蔵し、高齢者が倒れた際などに家族に通報したり呼吸の異常を調べたりすることができる。川崎市のかながわサイエンスパークの支援を受け、今年度から福祉機器メーカーなどに技術を売り込む。
開発した「レーダーライト」はLED電球に定在波のレーダーモジュールを組み込むもので、このほど特許を申請した。風呂やトイレなどに設置したレーダーが天井から高齢者の頭、肩までの距離を定点観測し、急な変化があるとインターネットで家族の携帯電話や福祉施設の端末に通報することができる。例えば、入浴中に浴槽の水位より低い位置に体の反応を検知すると、倒れた可能性が高いと判断する。
転倒など異常を感知した後は呼吸と脈拍の計測に自動で移行する。斎藤社長は「胸の皮膚の2~3ミリメートルの動きから脈拍や呼吸の変化を計測し、中枢神経疾患などに多く下あごが激しく動くあえぎ呼吸などもレーダーを通じ端末で把握できる」と語る。
転倒時には「呼吸、脈拍は正常範囲内です」といった音声データの送信も可能だ。生体情報の計測方法などは奈良女子大学の研究者と実証実験を重ねており、データベースの蓄積がある。
従来のセンサーを使った高齢者の異常探知機に比べ、レーダーの装置が電球内にあり簡単に取り換えができるため工事が必要なくプライバシーに配慮できる。家庭用電源から電気を得るため電池切れの心配がないほか、白熱球よりも長持ちするLED電球に装置を組み込むことで10年以上使用が可能になるという。
今秋以降、照明や福祉機器メーカーなどに技術を売り込み実用化につなげる。契約メーカーの装置販売によるライセンス収入などで収益を得る計画で、消費者の購入価格は3万円前後になる見通しだ。川崎市のベンチャー企業支援施設、かながわサイエンスパークが取引先企業を紹介するなど販路開拓を支援する。