老後支援サービス:ひとりの老後、支援人気 民間団体が身元保証 ルール不備、懸念も
2014年05月30日毎日新聞
高齢者の財産管理や入院、葬儀など死後の手続きを支援する老後サービスの人気が高まっている。東日本大震災以後、「終活」への意識の高まりが背景にあるとみられ、身寄りが近くにいない高齢者の家族に代わって身元保証する民間団体への入会者が急増している。ただ、遺産全額寄付を入会条件とする団体もあり、専門家からはルール作りを求める声が上がっている。
厚生労働省の調査では2010年現在、65歳以上の1人暮らし(単独世帯)は501万8000人で、このうち、子どもがいない人は3割近い144万3000人。6年前に比べそれぞれ35%増、43%増で孤立高齢者の増加が目立つ。病院や福祉施設に入る場合、身元保証人がいないとして断られるケースが相次ぎ、老後支援団体が注目されている。
高齢者支援が目的の公益財団法人「日本ライフ協会」(東京都、02年設立)では会員が今年3月現在、約3000人で、3年前の約3倍に増えた。安否確認や通院の付き添いをはじめ、入院や福祉施設入所、葬儀、納骨まで面倒を見る。
昨春、末期の肺がんと診断された神戸市内の女性(84)は夫に先立たれ、2人の娘は米国に住む。ホスピスに入ろうとしたが身元保証人がいないとして断られ、日本ライフ協会に入会。身元保証料、葬儀費用など計約170万円を納めて病院に入った。週1回、協会スタッフが衣類や化粧水などを持って来てくれる。女性は「最期まで面倒を見てくれるから安心」と話す。同協会の生駒貴徳・神戸事務所長は「震災後、老後に備えて『終活』として利用する人が増えた」とみている。
一般社団法人「人生安心サポートセンターきらり」(広島市、11年設立)でも会員は5月で約100人で、昨年同期の約2倍だ。
ただ、保証問題に詳しい司法書士や弁護士によると、死亡時に遺産全額寄付を契約条件とする団体もあり、「法的問題はないが、高齢者の弱みにつけ込んでいる」と指摘する声も出ている。厚労省は、老後支援団体の実態を把握していない。
保証被害対策全国会議事務局長の辰巳裕規弁護士(兵庫県弁護士会)は「入会金や契約条件など団体の『言い値』だけでは危険。トラブルに発展させないためにも、(契約内容などについて)法整備が必要だ」と指摘する。【後藤豪】