高齢世帯、35年に4割超 3分の1以上が一人暮らし
2014年04月12日日経新聞
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が11日発表した世帯数の将来推計によると、世帯主が65歳以上の高齢世帯は2035年に40.8%と初めて4割を超える。すべての世帯に占める一人暮らしは、3分の1を上回る1845万世帯になる。高齢世帯の急増は生活様式を変え、住宅や家電製品などの消費に大きな影響を及ぼす。企業と政府は先を見越した対応を迫られる。
同研究所が10年の国勢調査に基づいて、35年まで5年ごとの都道府県別の世帯の数を推計した。
高齢世帯の割合は10年時点では31.2%だが、35年までに約10ポイント上がる。30年から35年にかけての上昇幅は1.5ポイントと、25年から30年にかけての0.9ポイントを大きく上回る。
総人口の推計では、65歳以上の比率は60年に39.9%。世帯主の年齢をもとにした世帯数の将来推計はそれよりも25年早く4割に達する。
世帯全体の数は20年の5305万世帯をピークに減少に転じる。世帯主は家庭の主な稼ぎ手で、お金の使い道を左右する。世帯主の主な収入が年金などに限られたり、世帯数そのものが少なくなったりすれば、消費の低迷など経済活動への影響は避けられない。
内訳をみると、高齢世帯が40%以上の都道府県は10年時点では秋田県だけだが、35年には41道府県に急増。秋田県はトップで52.1%と初の5割の大台に乗り、世帯主の2人に1人が65歳以上だ。高齢者の増加に加え、若者が流出するためだ。
都市部でも高齢化が急速に進む。東京都や神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県などは35年までの25年間で、高齢世帯の実数が3割以上増える。
高齢世帯に占める一人暮らしの割合は10年の30.7%が、35年には37.7%になる。核家族化は一段と進み、高齢者の孤独死といった社会現象につながる懸念もある。
世帯全体に占める一人暮らしの割合は、25年には全都道府県で一人暮らしが最多。35年には37.2%に達する。若者の間でも結婚しない人が増え、家庭の3分の1以上が一人で暮らすという。
企業は先を見据えて動く。戸建て住宅大手は予想される新築案件の落ち込みを補うため新たな事業を開拓。積水ハウスはケアの専門家が常駐する高齢者住宅を販売。介護用ロボットの開発も始め、15年の製品化を目指している。トヨタホームも簡単なリフォームをすれば車いすでも生活しやすくなるよう、あらかじめ間取りを工夫した戸建て住宅を販売している。
セブン―イレブン・ジャパンが力を入れる弁当の宅配サービスは、利用客の6割が60歳以上。変化を先取りした動きは広がりをみせる。「日本で先行する少子高齢化は、いずれ欧米先進国にも訪れる。国内で需要の変化に応じた商品やサービスを出せれば将来、海外市場の開拓につながる」(ニッセイ基礎研究所の久我尚子准主任研究員)とみているからだ。
介護をはじめとした社会保障制度を持続していくための見直しは欠かせない。日本総合研究所の西沢和彦上席主任研究員は「負担の増加や、富裕層への給付の絞り込みが必要だ」と指摘する。