高齢者見守り、災害情報提供も テレビ、ネット接続でサービス拡大

2014年04月04日産経新聞

 高齢者を見守り、災害時は救援情報を提供する-。どの家庭にもあるテレビを放送以外に活用する動きが拡大してきた。地上放送のデジタル化完了から2年、テレビの枠を破る新サービスが形になりつつある。

 横浜市磯子区の洋光台北団地。テレビをつけて、チャンネルをテレビ朝日に合わせると、どの部屋の人がテレビを見たかという情報がインターネットを通じコンピューターシステムに送られる。

 一定時間、テレビ視聴がない場合は、コールセンターから本人に電話する。反応がなければ、連絡を受けた自治会役員が部屋を訪ね、安否を確認する。

 テレ朝や日立製作所、都市再生機構などが取り組む生活支援サービスの実証実験だ。

 同団地第1街区自治会の事務局長、高岡邦明さんは「この団地もお年寄りの孤独死が多い。こういう仕組みがあれば防げるのでは」と語る。

 見守りだけではない。テレ朝などは同団地限定のデータ放送画面で、自治会行事をはじめ地域情報を細かく発信している。住民が撮った写真や詠んだ俳句も表示される。「テレビに映ると、みんな喜ぶ」と高岡さん。

 テレ朝コンテンツビジネス戦略部の大場洋士さんは「テレビをネットに接続すれば、新しい機械を買わなくてもサービスを受けられる。地域コミュニティーの活性化につなげたい」と意気込む。

 徳島県美波町の阿部地区は海が山に迫る。南海トラフ巨大地震が発生すれば、17.5メートルの津波が到達すると想定されている。高齢化が進む漁村の住民にとって、防災は急務である。

 「大津波警報発表中。○○さん、今すぐ避難してください!」。1月、同地区の家々のテレビ画面が切り替わり、文字が映し出された。県や町、四国放送、日本テレビなどによる災害対策・高齢者支援プロジェクト「JOINTOWN徳島」の避難訓練だ。

 テレビをネットにつなぐことで、戸別の呼び掛けが可能になった。直前までテレビがついていた家が分かるため、建物の倒壊が相次いだ際は、人がいる可能性の高い住宅へ優先的に救助に向かえる。システムに登録した専用カードを住民一人一人が持ち、避難所で読み取れば、誰がどこにいるかも把握できる。

 徳島県の飯泉嘉門知事は「より多くの命を助けられるシステムにしていければ」と期待を寄せる。日テレは今後、東日本大震災の被災地や首都圏でも、見守りや地域情報提供を含めたモデル事業を行う計画だ。

 このほか、広島市の中国放送は、テレビと体重計をネットで接続し、体脂肪率などのデータをテレビ画面に表示、健康管理に役立てるサービスを開発している。

 もちろん、課題も多い。費用を誰が負担するのかをはじめ、ビジネスとして成り立たせる方法は固まっていない。各局がそろって実施しないと、サービスが普及しない恐れもある。

 日テレの若井真介メディアデザインセンター長は「産学官で研究会を組織し、オープンプラットホーム(他社も参加可能な開かれたシステム)として広げていきたい」と話している。