神奈川)お年寄りの安否、テレビで確認 横浜で実験

2014年03月25日朝日新聞

 地上デジタルテレビを使い、高齢者の安否確認をしたり、自治会の回覧板の情報を見られるようにしたりするサービスの実証実験が、今月末まで横浜市磯子区の洋光台北団地で行われている。テレビ朝日と日立製作所の共同事業で、首都圏では初の試みという。

 「最後まで1人で暮らしたいですからね。今は健康に不安はないけれど、こんなのがあると安心です」。団地で1人で暮らす岩倉嘉子さん(79)は、テレビ画面をリモコンで操作しながら顔をほころばせた。

 リモコンでデータ放送画面を選ぶと、「街の回覧板」や「イベント情報」などの選択肢が表示される。この団地向けに特別に設けられた情報ページで、自治会や老人会の催しのお知らせなどが見られる。内容は自治会役員がテレビ朝日にメールで送り、テレ朝側が掲載する。

 住民が趣味で育てた植物の写真や俳句も見られ、毎日更新される。岩倉さんは「朝7時にテレビをつけ、一つひとつ見るのが日課になった」。操作もすぐ覚えられたという。

 テレビを操作することが安否確認にもつながる。利用者が一定時間(実験では48時間以上)操作しないと、団地を管理するUR都市機構の関連会社から安否確認の電話が入り、応答がなければ自治会役員が駆けつける仕組みだ。

 システムは高齢化社会でのテレビの活用方法を探るため、テレビ朝日と日立が共同開発。URの協力も得て、同団地を実験場所に選んだ。1月末から、自治会を通じて募った高齢の23世帯が参加している。

 自治会の高岡邦明事務局長(68)は「一人暮らしのお年寄りが多く、自治会にとっては安否確認が最大の利点だが、写真も載せられる街の回覧板が好評だった。みなさん、楽しみにされていたようだ」と話す。

 このシステムは千世帯以上の規模を目安に、団地やマンション、自治体への有償での導入を想定。今後も改良を続け、事業化を目指すという。(太田泉生)