離れて暮らす親の安否確認 民間の見守りサービス多様に

2014年03月11日産経新聞

 離れて暮らす親が気がかり-。こんな家族に代わって高齢者の安否を確かめたり、異常があれば連絡したりするのが見守りサービスだ。市町村が独居高齢者らに提供する緊急通報システム以外にも民間企業が多様なサービスを販売している。(寺田理恵)

ポット、水道、電気

 北九州市の男性公務員(60)は東京勤務だった10年ほど前、同市に1人残った母親の無事を確かめるため、「象印マホービン」(大阪市北区)の電気ポット「iポット」をレンタルした。

 無線通信機を内蔵。母親が電源を入れたり、給湯したりすると信号がサーバーに送られる仕組みだ。男性は母親の使用状況を毎日、メールで受け取った。「電話をしても家にいないと、かえって不安。お茶好きの母がポットを使っていると安心できた」と振り返る。

 iポットは、東京で病気の息子とその看病をしていた母親が死後1カ月たって発見された事件をきっかけに同社が開発した。平成13年にサービスを開始し、利用料は税別で月3千円(初回契約料5千円)。全国で約3500台が稼働中だ。

 独居や高齢夫婦のみの世帯の増加に伴い、見守りの必要性が高まる中、先端技術の家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を活用するサービスも登場した。マンション向けにHEMSを販売する「ファミリーネット・ジャパン」(東京都渋谷区)は4月から、同社の機器を導入した世帯に追加費用なしでサービスの提供を開始する。

HEMSで計測した電力や水道のデータを基に、「12時間以上、水道の利用がございません」といったメールを送る仕組み。担当者は「電気はスイッチを入れたままだと反応しないが、水道ならトイレが使用されたかどうかで分かる」という。ただ、マンション開発業者が新築時に設置するのが一般的だ。

 地中送電設備会社「志幸技研工業」(荒川区)が開発した「ネットミル」は電力使用量の変化を解析し、異常があればメールで通知するサービス。世帯ごとの生活リズムを把握し、居住者が主体的に機器を使っているかを推定する。

 昨年4月に開始し、個人で利用する場合の利用料は税別で月3600円(初期費用2200円)。高齢者支援機関の職員が多数の世帯を見守る業務も想定しており、「リスクが高いと推定できる世帯から順にパソコン上に表示でき、危なそうな世帯から優先して安否確認できる」と説明する。

緊急時には急行

 緊急時にガードマンが駆け付けるのは警備大手「ALSOK」(港区)の「みまもりサポート」だ。高齢者が室内で持ち歩く緊急ボタンと、火災やガス漏れを監視するセンサーを設置。警報を受けて急行し、状況に応じて消防などに通報する。市町村を通じた利用を見込んでいたが、ニーズに対応して個人客にも対象を広げた。利用料は税別で月2400円(初期費用1万1千円)。

 市町村が実施する見守りの対象外の高齢者でも民間なら料金を払って利用できる。見守られる高齢者が意識せずに使えるサービスが多く、心配な家族は検討してはどうだろうか。

■在宅療養者向けも

 在宅で療養する高齢者や認知症患者ら要介護度の比較的重い人を対象にした見守りシステムもある。

 介護機器メーカー「テクノスジャパン」(兵庫県姫路市)が開発した「タスカル」は、映像や音声などの通信機能を持つ介護ロボットと呼び出しスイッチ、点滴終了コール、離床センサーなど各種センサーで構成。介護保険法改正(平成24年4月施行)で創設された定期巡回・随時対応型サービスと組み合わせると、部屋がナースコールのある病室のようになるという。高齢者支援機関や介護事業者などを窓口とする利用を見込んでいる。