東京の高齢者世帯、44%が一人暮らし 20年後

2014年04月12日日経新聞

 国立社会保障・人口問題研究所が11日発表した世帯数の将来推計は、一人暮らしの高齢者が全国で急増する日本社会の構造変化を浮き彫りにした。2035年には世帯主が65歳以上の高齢世帯のうち、一人暮らしが4割近くになる。一人暮らしの高齢世帯の比率は東京都が最も高い。地方でも高齢化が一段と深刻になる。大きく変わる家族の姿。自治体や企業は対策を急いでいる。

 一人暮らしの高齢者は10年は498万人だが、35年には762万人に増える。53%の伸び率だ。2世代で同居する人が少なくなり、一人で暮らす高齢者が増えるためだ。

 特に都市部で高齢世帯の一人暮らし比率が急速に高まる。地方から出てきた団塊世代が、配偶者の死別などで「独居高齢者」になるケースが相次ぐとみられている。東京都は10年の38%、64万7千人から、35年に44%、104万3千人になる。

 自治体などは、高齢者が多く暮らす大規模団地での対策を急いでいる。横浜市青葉区にある1500戸の奈良北団地では、住宅をバリアフリー仕様に改装した。団地内に介護事業者がデイサービスなどの拠点を開設し、生活相談などの見守りサービスを提供する。

■若者の流出深刻

 地方では早くから高齢化が深刻だった。高齢世帯の比率が最も高い秋田県は、職を求める若者が県外に流出している。秋田大学や秋田県立大学は、卒業生の就職先の6割以上が県外。TDKが県内工場の再編を進めるなど、雇用の場が失われていることが大きい。

 東日本大震災の被災地では高齢化のテンポが速まっている。福島県の30年の高齢世帯の割合は45.3%で、前回より3ポイントも上がった。原発事故の影響で、子どものいる世帯が県外に避難したまま。福島県に帰還するのは比較的、高齢者が多い。

 人口減少に歯止めをかけようと、秋田県や青森県は、結婚支援や県外からの移住者を増やす取り組みを始めた。離島を数多く抱え、若者流出に悩む長崎県は、新規雇用に取り組む企業への助成を強化している。

■家族介護の時代終わる

 一人暮らしの高齢者の急増は家族で介護する時代が終わることも意味する。厚生労働省調査では、13年度に特別養護老人ホーム(特養)に入所できない高齢者が全国で52万人に上った。施設の整備を急がないと「介護難民」が増えてしまう。

 政府は膨らむ社会保障の給付をどのように賄うかも課題だ。消費増税だけでは賄いきれない。高齢者の介護や医療は現役世代の仕送りにもよるが、これらの現役世代の負担には限界がある。高齢者でも働き続けられる環境を整えるとともに、給付の効率化を進める改革が欠かせない。