「団地の孤独死」を防げ 注目集める“おせっかい”とは?
2013年11月28日日刊ゲンダイ
「男性の場合は、高齢者同士の交流サロンに呼ぼうとしても、〈何のためにお茶を飲みに行くんだ?〉と目的がないと集まってくれません。ご自宅に伺っても〈オレは大丈夫〉で終わってしまうのです」
民間の非営利福祉団体「東京都社会福祉協議会」の松田京子さん(地域福祉部部長)はこう言って苦笑いする。
男は、女性のように暇つぶしの“茶のみ話”が出来ない。だからやがて“孤立死”するのだ。
板橋区で民生委員を務める廣瀬カズ子さんも、「テレビと話している。というか、テレビとしか話せない人が増えています」という。
今月25日、団地の孤立死に関するシンポジウムが都内で開催され、改めてわかったのは男の社交性の乏しさだ。
同シンポジウムでは、練馬区光が丘、板橋区高島平、墨田区白髭東の団地のアンケート結果も発表。回答者の多くは、高度経済成長期に金の卵と呼ばれて都会に出てきた人たちである。
そんな彼らの〈外出頻度〉は、約2割の人が週に2~3日以下。病院と買い物以外はほとんど外出していないことがわかる。また、週1日か、それ以下という“引きこもり”状態の人も、6.9%いた。
当然ながら孤立死の心配も出てくるが、約58%が「不安を感じている」と回答。単身者に限れば74%に跳ね上がる(記事末尾)。
一方で、「一人で生きることを選んで生きてきたのだから孤立死は当然」と、堂々と孤立死を宣言している人もいる。しかし、死後数日が経って腐敗した状態で発見されるのは、尊厳ある死と呼べるのか。遺体を処理する人にも迷惑だ。
■ヤクルト販売員が命を救う
では、後で慌てないために、いま何をすればいいのか。シンポジウムを主催した全国介護者支援協議会の上原喜光理事長がこう言う。
「孤立死しない方法のひとつとして、各団地では〈おせっかい〉を提唱しています。おせっかいというと、昔の口やかましい人を想像して印象が悪いのですが、〈大丈夫だ〉と言ってドアを開けてくれない人にも、〈また顔を見に来るから〉と半ば強制的に面倒を見る。そして自分がボケ始めたら、今度は別の人におせっかいを焼いてもらう。高齢者の方々が必ず言うのが、遠くの親戚より近くの他人です」
おせっかいを焼いたり焼かれたりすることが大事なのだ。例えば、ある高齢者は「ヤクルト販売員がいい」と言う。ヤクルトには警察と連携した高齢者宅の“異常”を通報するシステムがあり、実際に人命救助に役立った例がある。商品を手渡す際に彼女たちは、「今日はいい天気ね」「昨日のドラマはどうでした?」と必ず無駄話をしてくる。これが、いいのだ。他人と会話するのが苦手という人は、宅配サービスを利用するのも手かもしれない。
【孤立死に対する意識】
◆種別/非常に感じる/やや感じる/あまり感じない/ほとんど感じない/無回答
◇全体/23.7%/34.8%/26.4%/10.0%/5.1%
◇光が丘/22.7%/34.4%/26.4%/11.8%/4.7%
◇高島平/29.1%/34.6%/26.8%/5.8%/3.7%
◇白髭東/21.5%/35.2%/26.2%/10.6%/6.4%
◇男性/22.5%/36.1%/27.2%/10.5%/3.7%
◇女性/24.1%/34.6%/26.1%/9.8%/5.4%
◇65歳未満/20.4%/37.0%/27.6%/11.6%/3.5%
◇65~75歳/24.0%/36.0%/26.7%/8.1%/5.1%
◇75歳以上/26.0%/32.6%/25.2%/10.3%/6.0%
◇単身者/37.1%/37.1%/14.8%/5.4%/5.6%
◇夫婦/20.1%/34.0%/31.8%/8.6%/5.5%
◇高齢者と子/19.6%/34.0%/29.4%/11.8%/5.2%