団地の高齢者、見守ります 首都圏で事業相次ぐ
2013年11月01日日経新聞
高齢化が進む団地には、未来に向けたヒントがいっぱい――。首都圏の団地で、そこに住む高齢者を対象にした新たな試みが相次いで始まっている。民間企業がIT(情報技術)を活用した健康づくりや、一人暮らしの人への「見守り」といったサービスを提供。安心して団地で暮らし続けることができる環境づくりを目指す。全国的に進む高齢化社会に向けた新事業の開発に役立てたいという狙いもある。
「歩いた後の血圧にしてはちょうどいいかな」
67歳の男性は日課の散歩を済ませた後、血圧計を使い、笑顔を見せた。
10月30日、東京・練馬の光が丘団地。単身で暮らす高齢者を対象にしたある実験が始まった。
団地内のコミュニティカフェを拠点に家事代行サービスなどを手がける御用聞き(東京・板橋)と、システム開発のYUWA(東京・港)が連携。血圧を測定すると、健康管理システムにデータが無線送信される。
家族やシステム管理者もデータを閲覧できるため、長期間測定がなかった場合には連絡し、安否確認することができる。
参加した男性は「見守りサービスでも自宅訪問は抵抗感がある。血圧計で健康指導だけでなく、自然な形で安否を確認してもらえるのがいい」と話す。八王子市の館ケ岡団地でも同様の実験を始める予定だ。
横浜市青葉区にある約1500戸の都市再生機構(UR)の大規模団地「奈良北団地」では、既存の住宅をバリアフリー仕様に改装。介護事業のアビリティーズ・ケアネット(東京・渋谷)がデイサービスなどの拠点を開設し、見守りサービスを提供する。
第1弾として団地内の15戸を改修し手すりなどを設置。スタッフが団地内の事業所に常駐し電話で安否確認をするほか、月1回ほど直接訪問して生活相談に乗る。
基本サービスの料金は月2100円。オプションとして緊急時に通報があった場合に駆け付け、家族に連絡する24時間サービスも加える。「みまもりサービス」と名付け「最終的には50戸ほどに増やしたい」(UR神奈川地域支社)。
綜合警備保障は昨年、千葉幸町団地で高齢者のいる14世帯に見守りのシステムを1年間、補助金を使い消費者負担なしで提供した。
高齢者が部屋で体調が急変した場合などに非常ボタンを押せばガードマンが駆けつける。利用者は2年目以降、自費で利用を続けるかどうか決める。市や自治会と定期的に会合を開いて使い勝手などを聞き取り、製品改良につなげる。
介護予防や健康づくりに関する新しいサービスも登場している。
埼玉県朝霞市の膝折団地と東朝霞団地では12月まで、健康計測機器メーカーのタニタと連携した「団地まるごとタニタ生活」を実施中だ。タニタの計測機器で健康状態を把握し、食事指導を受けるなどして、健康状態を改善させる。
参加するのは、両団地に住む29~80歳の80人。自己管理が中心のコースから、タニタの担当者が手厚く支援するコースまで3種類のコースに分かれる。血圧や体脂肪率などを測った後、食事に関する助言を受けたり、歩数計で毎日歩いた歩数を記録したりする。
期間終了後に再び身体状態を測定し健康状態の改善度合いを確かめる。医療費に変化が生じたか、聞き取り調査も行う予定だ。