終活:ツアー盛況 旅行会社、葬儀社が参入 子世代参加も

2013年10月29日毎日新聞

 自分らしい人生の最期を探る「終活」のツアーが新たなビジネスになりつつある。中高年向け商品が主体の大手旅行会社「クラブツーリズム」(東京都新宿区)が昨年から本格的に取り扱い、今年になって小規模な旅行会社も企画、葬儀会社も参入している。「終活」の言葉が浸透しつつあり、「日常生活を離れ、『死』とじっくり向き合いたい」とのニーズが高まっているようだ。【平塚雄太】

 高度成長期の1960年代に新婚旅行や団体の客でにぎわい、今も高齢者に人気の静岡県熱海市。9月末、「エイキュー・トラベル」(東京都狛江市)の終活ツアーでは、岬上に建つ宿泊先の老舗ホテル展望台で「遺影撮影」が行われていた。「自然な表情の写真を葬儀に」との要望を受けてツアーに組み込まれ、参加者がカメラマンとの話に表情をほころばせると、シャッターが切られる。

 移動バスでは相続・遺言クイズが行われ、「録音テープに吹き込まれた遺言は無効か」などが出題された。答えは「○」。「改ざんや変造の恐れがあり無効なのです」と解説があると、一同から「へー」と声が漏れる。その後は司法書士らによる相続相談も続いた。

 横浜市鶴見区から妻と参加した林正憲さん(73)は「何度か旅行した懐かしい熱海で、思いのほか楽しく学べた。帰ったら子供3人のために遺言を整理したい」と話した。

 ツアーの内容は、ホテルでの宿泊付き(5万円台)や一流ホテルの食事付き(約7000円)、墓園見学を取り入れたセミナー(約1000円)など多様だ。

 各社が参入する背景には、「終活」の浸透がある。民間調査会社「ライフメディア」が2月、インターネットで60歳以上の3611人から回答を得たアンケートでは、「終活」の言葉を知っていたのは27%で、昨年の10.2%から3倍近くになった。また、47~49年の第1次ベビーブームに生まれ、65歳以上に達した「団塊の世代」が旅行意欲の高い有望市場に育っている現状もある。

 今回初めて終活ツアーを行ったエイキュー・トラベルの八十島亜由子社長は「終活は暗いイメージだが、楽しみながら知識を吸収できるツアーは今後、人気が高まるのでは」と、同様の商品を増やす予定。クラブツーリズム社はもともと、シニア向け商品を開発してきたノウハウがあり、「身辺整理や成年後見制度などのセミナーを開催し、ニーズを探ってツアー終活商品を拡充する」と話す。