高齢者を見守る通信機能付き血圧計、薬局チェーン「薬樹」が瀬谷区で試行/横浜

2013年10月20日神奈川新聞

 通信機能付きの血圧計を使った高齢者の見守りサービスが、横浜市瀬谷区で試行されている。首都圏に約150店舗の保険調剤薬局を展開する薬樹(大和市)が、自宅で測定した値をデータ送信できる血圧計を活用。薬局へデータが送信されなかったり、測定値に異常があった場合、ケアマネジャーや主治医らに連絡を取る「日本で初めてのサービス」(同社)という。独居老人の孤立が社会問題化する中、地域のさまざまな職種の連携による見守りが期待できるとして、行政も注目している。

 サービスの利用者は、同社の訪問服薬指導を受ける瀬谷区在住の70~90代男女5人。薬樹が無償提供した血圧計で毎日午前9時までに測ることになっており、測定値は自動的に「訪問健ナビ薬局瀬谷」へ送られる。送信されなかった場合は薬局から自宅へ電話。本人と連絡が取れないときはケアマネジャーなどに連絡し、安否を確認してもらう。

 サービスを開始した1月以降、主治医に連絡したケースはないというが、測定値に明らかな異常が見られたときは、医師と連携を図る仕組みだ。「自分に何かあったときのことを考えると、こうしたサービスはありがたい」。利用者で、90代の一人暮らしの女性は話す。

 血圧計を開発したメーカーは医療機関や薬局が患者のデータを管理したり、一般の人が自宅のパソコンを使い、体調管理に役立てることを想定していた。しかし、メーカーから製品を紹介された薬樹が、高齢者の見守りに生かすことを思い立ったという。同薬局では、薬を患者の自宅へ届けるサービスを手掛けるなど在宅医療の分野に注力しており、付加価値になると判断した。

 同社の取り組みに対し、横浜市は「高齢者に携わる多職種の連携強化が期待できる」(地域医療課)として2012年度、在宅療養ネットワーク強化等支援事業に採択。今後の展開にも関心を寄せる。同社は他地域に広げるほか、例えば遠方に暮らす家族のもとにも血圧データを送る、といったことも視野に入れる。

 一方で課題もある。血圧計の購入費は市からの補助金で賄ったものの、各世帯の毎月の通信費は薬樹が負担。利用者の負担は今のところゼロだ。「サービスの持続性や拡大を考えると、今後、費用負担の在り方を検討しなければならないだろう」と担当者。

 個人情報の取り扱いについては、従来から利用者の情報を持っている主治医やケアマネジャーとの連携となるため、情報が外部に漏れることはないという。ただ、今後、サービスの拡大に伴い、薬局単位ではなく、コールセンターのような場所が一括して血圧の1次チェックを行うことになったときには個人情報をいかに保護するかの検証が欠かせないとしている。

 同社は「一人暮らしのお年寄りが増える中、自宅で安心して過ごすことのできる仕組みをつくるのが狙い。薬局を中心とした医療・介護のネットワークを構築したい」と話している。