お掃除ロボ お年寄りを見守ります 自治医大共同開発

2013年09月25日東京新聞

 室内用の掃除ロボットが独り暮らしの高齢者を見守り、万一の時は家族に知らせる「見守りシステム」を、自治医大地域医療学センター(栃木県下野(しもつけ)市)が家電メーカーと共同開発した。動き回れて簡単な会話もできる掃除ロボットを使った見守りシステムは珍しい。十月に実験を始め、来年の実用化を目指す。

 システムでは、まずテレビなどに取り付ける屋内用位置確認システム「IMES(アイエムイーエス)」が、風呂場など居住者が家の中のどこにいるかを把握。掃除ロボットはこうした位置情報に加え、冷蔵庫や洗濯機の使用記録も電波で感知し、自治医大のサーバーに安否情報を自動転送する仕組みだ。

 掃除ロボットの能力は高い。「お帰り」「ご飯食べた?」「調子は悪くないか」-など随時話しかける能力を備える。高齢者がトイレなどに立った時は入り口で待ち、長時間応答がないなど異常を察知すれば、やはり自治医大に自動的に知らせる。

 自治医大は家族のスマートフォンに安否情報を送信。高齢者が外出する際もスマホを持っていれば衛星利用測位システム(GPS)がどこにいるかを把握し家族に知らせる。

 開発の中心になったのは、同センター講師の藍原雅一(あいはらまさかず)さん(52)。気を使ったのは「システムを使う側の心理」という。家電を使った見守りシステムづくりには多くのメーカーが取り組むが、対象者が「監視されている」と不快に感じやすいことが課題とされてきたためだ。

 そこで今回は前もって「冷蔵庫の開け閉めまでは家族に知らせない」などの希望を聞き、本人が望まないデータは送信しないようにした。掃除ロボットを使ったのも「監視役」と意識されにくいとの判断から。藍原さんは「監視と見守りは表裏一体。高齢者が家電の使用を避けるようになった例もある」と指摘した。

 実験は群馬、宮城、熊本の三県で始める予定。高齢者らのモニターに、使い勝手などに関する意見を聞く。