孤独死防止の安否確認事業、横浜のNPOが始める/神奈川

2013年09月08日神奈川新聞

 孤独死が社会問題化するなか、一人暮らしが長かったり、家族が遠方で暮らしていたりする人を対象に安否確認を行う事業を横浜市内のNPO法人が始めた。手掛けるのは30代を中心にした元IT技術者らで、利用者の中心に据えるのは同世代の人たちだ。家族に心配をかけたくないため連絡をためらうといった、自らの経験から「孤独死は高齢者だけの問題ではない」との認識が出発点にある。地縁血縁とは異なる「第三者のコネクション」ならではの気安さで、新たな安心のあり方を模索する。

 事業を手掛けるNPO法人「LDCソリューション」(横浜市都筑区)は、元IT技術者ら5人で2011年11月に立ち上げたグループだ。副理事長の毛塚敏孝さんは「若くても突然亡くなる人はいる。一人暮らしをしていたころ、体調が悪いときに『もし死んでしまったら、誰が見つけてくれるのか』と考えたことがあった」と設立の動機を話す。

 メンバーは30代が中心。孤立や孤独死は高齢者だけの問題ではない、という認識をそれぞれが抱えていた。

 理事の宮原邦彦さんは以前、体調を崩し、病院に通いながら仕事をしていたことがある。一人暮らしで心細さはあったが、「離れて暮らす親を心配させたくなくて連絡はしなかった」。

 そうした経験を踏まえ、サービスは第三者ならではの頼りやすさとコミュニケーションを重視する。

 1~4週間おきにメールや電話で連絡を入れ、不通が続いた場合は事前に登録した家族や友人に伝えるというシンプルなものが中心で、やりとりの中から利用者の健康状態も把握するよう心掛ける。費用はサービスの内容により月額300~1800円。母子家庭や障害者のいる家庭は無料でサービスを受けられる。

 「もし自分が死んだら、子どもはどうなるのか心配だった。これで放置されたままになることはない」。インターネットでサービスを知り、8月から会員になった介護職の女性(46)=町田市=はそう話す。

 特別支援学級に在籍する中学3年生の息子(15)と2人暮らし。昨年、病気で入院し、手術もしたが、実家は九州で親戚も近くにはいない。「家族に相談したら地元に帰るよう言われる。心配をかけたくないし、戻っても仕事はない。仲のいい友人にも言えないことはある」と、誰にも知らせなかった。

 毎週届くメールに返信することで「私のことを見ていてくれる人がいる、とほっとする」とも。

 「社会とのつながりが希薄化し、孤立する人は増えていると思う。孤独死は誰にでも起こりうる。普通に暮らしている人に利用してほしい」と毛塚さん。

 将来的には、個人や企業からの寄付などで運営し、すべてのサービスを無料で提供することも目指す。事業を広く知ってもらうため、今月末からはスマートフォン(多機能携帯電話)用のアプリの無料配布を開始する。

 問い合わせは、LDCソリューション電話045(620)2952。


◆孤独死
 一般的には、誰にもみとられずに息を引き取り、一定期間放置されたケースを指す。単身高齢者の増加に伴い表面化したが、定義が明確ではないなどの理由で国や大半の自治体は統計データを取っていない。昨年3月には札幌市で40代の姉妹が亡くなっているのが見つかった。姉は病死で、知的障害がある妹は凍死していた。地域社会のつながりの希薄化や「福祉の貧困」など、高齢者以外にも孤独死が生じる要因が指摘されている。