慶大、電波で転倒・転落監視する高齢者向けシステム

2013年07月17日朝日新聞

 慶応義塾大学理工学部情報工学科の大槻知明教授は16日、センサーなどを身に付けることなく、電波を使って人の転倒・転落を検出するシステムを開発したと発表した。センサー装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担なしに、高齢者などの見守りができる。今後、住友電気工業と協力して実用化を目指す。

 電波で人の行動を認識するアレーセンサーと、車のスピードや球速の予測などに使うドップラーレーダーを組み合わせたシステムを開発した。空間の電波の伝わり方を観測し、さらにドップラーシフトを検出することで人の転落・転倒を予測する。センサーから直接見える場所での転倒を95%以上の確率で検出するほか、物陰など直接は見えないところでの転倒でも85%以上の確率で予測できるという。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者の要介護の直接原因の約1割が骨折や転倒になっている。また、高齢者の5人に1人が1年間の間に一度は転倒を経験している。転倒を速やかに検出することは、生命や後遺症の観点から重要という。従来はセンサーを身に付けるタイプのシステムや監視カメラが主流で、センサー装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担などが問題となっていた。

 17日から静岡県浜松市で開かれる電子情報通信学会の「知的環境とセンサネットワーク研究会」で詳細を報告する。