アジアの高齢化、日本の貢献策探る─厚労省で検討会始まる

2013年06月13日キャリアブレイン

 今後急速に高齢化するアジアの国々に対し、日本がどのように貢献できるかを探る厚生労働省の検討会が新たに設置された。タイやシンガポール、ベトナムなどのASEAN諸国では、日本以上に速いスピードで高齢者人口の割合が増えると推計されている。これらの国の課題や、これらの問題の解決に貢献しうる日本の経験を明らかにし、国際協力の足掛かりとする。

 新たに設置されたのは、「国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会」。Active Agingとは、世界保健機構(WHO)などが提唱しているもので、健康や社会参加、社会保障を充実させることによる高齢者の生活の質(QOL)を高めていく考え方を指す。検討会事務局の同省国際課国際協力室はこの日の資料の中で、健康分野における日本の取り組みの例示として、高齢者への医療、ケア人材の育成、居宅高齢者への見守り、認知症サポーターなどを挙げた。

 検討会の委員は、人口動態や国際協力、高齢者医療などの専門家が務める。この日の意見交換では、支援対象の国における宗教の役割や、一般的な家族像、地域の現状を把握したうえで、課題を捉えていくという認識が共有された。

 大泉啓一郎委員(日本総合研究所上席主任研究員)はActive Agingの概念について、「社会がどう高齢者を支えるかではなく、高齢者がどう高齢者を支えるかという視点が面白い」と述べ、東南アジアの農村は、日本のように過疎地域ではなく、人口規模が小さくないことを踏まえて、労働と社会参加を同時に促すような村起こしの視点を提案した。

 鈴木隆雄委員(国立長寿医療研究センター所長)は、「65歳以上といっても、ひとくくりには出来ない。まずはアクティビティの高い前期高齢者、自立支援が必要になってくる後期高齢者が(アジアの各国で)どれくらいいるのか把握が必要だ」と述べ、“高齢化”をより実態に合わせてとらえる必要性を指摘した。

 検討状況が海外にも発信できるよう、この日の事務局の資料は英語で作成された。来年2月ごろをめどに報告書をまとめる。【大島迪子】