高齢者の暮らしの基礎知識(1)

2013年06月05日読売新聞

 6月5日は「老後の日」。あなたも、高齢期の暮らしについて考えてみませんか。

 「介護は自分には関係ない」と思う人は少なくなってきたようですが、「でもまだ先のこと」と思う人は多いのではないでしょうか。しかし、高齢期は若い時代に比べ、日常のリスクがとても高くなります。

 まずは下のクイズに挑戦!

次の文章は、○それとも×?

問題1
高齢になったら「平均寿命」までの介護や資金の計画をたてておけばよい。

問題2
平均的な「介護が必要な期間」は、男性で約9年、女性で約12年である。

問題3
ひとり暮らしの高齢者は、今後女性より男性のほうが急増すると予測されている。

1の答え→× 寿命は人によって大きく異なる

 年度により若干の違いはあるものの、"平均寿命"は右肩上がりとも言えます。そして、男女ともにこの先まだ平均寿命は延びるだろうと予測されています。しかし平均はあくまでも参考値であり、自分が何歳まで生きるかは、その人固有の可能性があります。高齢期の人生設計で、平均寿命を目安にするのは危険です。平均より長生きすることを見越し、100歳まで生きることを仮定して介護や資金の設計をしておきたいものです。

2の答え→○ 想定以上に介護期間が長引くことも

 日本は長寿大国ですが、長生きが必ずしも幸せと繋がらない場合もあります。高齢期は、若い時代に比べ、病気や介護のリスクが高まり、健康・自立であっても、判断力が鈍ったり持久力が減退したりと、何かと不便な生活になっていきます。長生きすればするほど要介護の可能性は高まり、その期間も長引く場合があります。「自分は大丈夫」とは言い切れないのです。

3の答え→○ 男性のひとり暮らし対策も必要

 男女の寿命の差から考えると、昔から女性のひとり暮らしは多いのですが、今後は男性も急増していくでしょう。男性も長寿化していることに加え、離別や生涯独身の人が増えているからです。いずれにせよ、独居高齢者はさらに増加していくと予測されているので、高齢者の住まいや支援体制の整備が急がれます。

「誰に」介護してもらうか

 高齢期の人が参考にしたいのは、「平均寿命」ではなく、自分の年齢の「平均余命」です。しかし、これも参考にはできても、自分の余命とは限りません。「思っていたより長生きしたために、資金が底をついてしまった」ということは避けたいところ。長生きを前提に生活設計をたてましょう。

 若い時代と異なり、必ず生活設計に入れておきたいのは、病気や介護の対策です。厚生労働省によると2010年時点の「健康寿命」(介護も看護も不要な自立の期間)は、男性で約70.4歳、女性で約73.6歳です。平均寿命との差が、誰かに何らかのお世話をしてもらわねばならない平均介護期間です。この「誰か」を誰に頼れるか、早い時期から考えておかねばなりません。家族を思い浮かべる人は、本当に可能かどうか話し合うことも必要です。頼れる人がいない場合、外部のサービスを予め検討しておきましょう。

 そしてこの平均介護期間も、あくまでも平均。実際には介護期間ゼロの人もいますし、十数年と長い人もいます。また、85歳を超えると3~4人に1人は認知症とも言われます。身体が元気でも判断力を失う可能性もあります。高齢期の生活設計は、簡単ではありません。長生きのリスク対策を、元気なうちからしっかりと考えておくことが大切です。

ひとり暮らしのリスク対策

 65歳以上のひとり暮らしは、非常に増えています。1980年には、男性約19万人、女性約69万人の合計88万人程度でしたが、2010年には、男性約139万人、女性約341万人の合計約480万人まで増加。今後も増加が見込まれています。なかでも、ひとり暮らしの場合、男性は女性に比べ「近所づきあいがほとんどない」「困ったときに頼れる人がいない」と感じる人の割合が高く、孤立化する傾向が目立ちます。

 急病で倒れた場合などは、命にもかかわる問題ですので、ひとり暮らしの緊急時の対策は不可欠です。在宅の場合は、緊急通報システムの導入なども考えられますが、生活全体を考えた場合、将来の介護も踏まえ、高齢者の住まいへ住み替えることもひとつの選択です。

 「高齢期の暮らし」は設備(ハード面)だけで捉えられません。安否確認や生活の支援など、人的サービス(ソフト面)も考慮に入れるべきです。ひとり暮らしではないにしろ、高齢者だけの世帯(高齢者夫婦)も同様に増加しています。いずれひとり暮らしになる可能性が高いことを考えると、その時のことを踏まえ早めに検討しておきたいですね。