高齢者社会を考える その2「任意後見制度」

2013年04月28日南日本新聞

Q.遠方に高齢の母親が1人暮らししています。前回のご助言に従い医師の診断を受けたところ、判断能力に問題はなく認知症等ではないとのことでした。しかし母親は今後の生活に不安を持っているようです。安心して暮らしていくためにどのような法的な手当てがありますか。

A.良かったですね。現時点で法定後見制度を利用される必要はないようですが、ご本人の将来の安心のために任意後見制度を利用することを検討されてはいかがでしょうか。

 任意後見制度は、将来、認知症や脳梗塞(こうそく)などを患って判断能力が低下した場合に備えて、元気なうちに自分の意志で
①だれにどのようなこと(財産管理や法律行為の代理等)を手伝ってほしいか
②どのようなケア(療養看護等)を受けたいか
-などを表明して、信頼できる人との間で任意後見人になってもらう契約(任意後見契約)をしておく制度です。実際に自分で十分な判断ができなくなってしまった後、任意後見人に自分の意志で定めた任意後見契約の内容どおりの活動をしてもらうことができます。

 任意後見契約は、判断能力が低下した段階で、任意後見人に多くの権限を与えるものですから、正しく契約が行われなければなりません。その締結が適法に行われ有効なものとするために、公証人の作成する公正証書によって契約することになります。また、任意後見契約が締結されると登記がなされます。

 任意後見契約は契約の締結によりすぐに効力が生じるのではなく、本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所によって本人に代わって任意後見人の活動を監督して本人の保護を図る任意後見監督人選任の審判がなされたときからその効力が発生します。

 任意後見人との親密度によっては、まず連絡をとったり実際に会いに行って健康や生活の状態に変化がないかを見守る見守り契約と一緒に任意後見契約を締結したり、一定の財産の管理を任せる委任契約(財産管理契約)を結んでおきこれと同時に判断能力に問題が生じた際に任意後見契約に移行する契約内容にすることも可能です。

 任意後見契約は公証人の前で契約しますが、契約内容についてはお母さんの健康状態や生活状況、財産管理に必要な代理権の範囲、成年後見人に支払う報酬など、具体的な事情を前提とする判断が必要になりますから、事前に弁護士に相談されることをおすすめします。

回答は上山法律事務所(鹿児島市小川町)の上山幸正弁護士