ヤマト運輸 「見守りサービス」商品化を目指す
高齢者訪問し安否確認、40自治体が検討中

2013年04月08日物流ウィークリー

 ヤマト運輸が青森県黒石市と共同で4月から展開する「見守り宅配便」(仮称)サービスのテスト運用が今月上旬スタートした。従来の「買い物」は付随しない初の試みで、独居する高齢者を訪問し、安否を確認するもの。「見守り宅配便」は住民の高齢化や過疎化などに悩む自治体にとって、「孤独死を防ぐ最善策」として口コミなどで広まり、3月13日現在、「買い物プラス」タイプで、4自治体(6案件)が採用しているほか、40自治体(35案件)で検討している。準備が整い次第、新年度内にも商品化を目指すという。

 「見守りサービス」は2010年に岩手県西和賀町で開始した「まごころ宅急便」がベース。きっかけは、盛岡駅前センターのセールスドライバーが懇意にしていた老女の孤独死だった。「3日前に会った時、何となく元気がないな」と感じたドライバーは「あの時、もう一声かけるか、通報するなどして孤独死は防げたかも知れない。地域で守れる仕組みを宅急便のネットをフル活用して作れないものか」と東奔西走し、「見守り」と「買い物代行」を結び付けた新事業が生まれた。
 見守りサービスは現在、買い物代行が付随したものを岩手、兵庫、高知、島根の4県で6案件が稼働。成約案件がこのほか4案件あり、提案中が35案件、40自治体。有料サービスだが、料金は運賃に組み込む形で正式に商品化はしていない。

 黒石市のケースはこれまでと異なり、「見守り」専門になる。市内1万3500世帯のうち、65歳以上の独居900世帯を対象に、インフルエンザの予防接種や健康診断に関する市の刊行物を毎月1回、セールスドライバーが配達し、受領印をもらう際に安否を確認、市に報告する仕組みだ。鳴海広道市長は「高齢者の孤立と孤独死防止を強化する」とコメントしている。

 見守りサービスには課題がある。ヤマト運輸営業戦略部の佐々木勉部長は「クール宅急便のように『広く、あまねく』というわけにはいかない。現在は個々、バラバラ、人に頼って提案している。これを標準化し、全社的な仕組みを構築しなければならない。見守った情報をどのように自治体に返すか。営業は自治体のどの部署に話せば早いのかなど検討中」という。

 買い物サービスも「便利」な面だけではない。「地元の商店を支援する提案でないと受け入れてもらえない」。

 孤独死防止の見守りは本来、「民生委員」の仕事だった。しかし、個人情報保護法の影響で、名簿資料さえ提供を拒む人もいる。集合住宅の場合、管理人が居住者の情報提供をしないケースも多い。さらに高齢者が急増する中、民生委員の高齢化も進み、人員不足が常態化、業務は増大する一方で、全国的に「手が回らない」状況となっている。このため、見守りサービスに期待する自治体は多い。

 「『見守られる』(見張られる)ことに抵抗感を抱くお年寄りも多い。半面『安心して暮らしたい』も本音で、それとなく見守る宅配でのサービスが最良のサービス」と佐々木氏。将来的には、対象となる高齢者が「買い物をした」「医者に行った」「孫の顔を見に行った」など「生活動線」をつかみ、自治体に報告するシステムになるだろうと考える。

 今後、全国24万の取扱店、4000営業所と6万人のセールスドライバー、3万5000台の配送車両による宅急便のネットワークを駆使し、買い物代行プラスと見守り専門の両タイプの商品化を目指す。