ジーコム 高齢者住宅用コールシステム
2013年03月19日SankeiBiz
■配線工事不要で100施設に納入
少子高齢化社会の進展に伴って、新築住宅市場はさらに縮小するとみられる。その半面、伸びが期待されるのが、介護・医療と連携して支援を提供するサービス付き高齢者向け住宅。また、高齢者を対象にした賃貸住宅の整備のあり方も、今後の重要課題となる。こうした市場背景を踏まえ、警備機器メーカーのジーコムが力を入れているのが、居住者を見守り、安全安心を確保するワイヤレス機器群だ。
そのひとつが、高齢者住宅・施設専用のケアコールシステム「ココヘルパ」。販売を開始したのは2011年5月で、13年3月期までの累計納入実績は100施設に達する。「配線工事が不要なので簡単に設置することができ、工事金額を抑制できる」(杉原博夫社長)点が、普及の要因だ。
このシステムでは、居室や共用トイレ、浴室などにセンサーや呼び出しボタンなどを設置。異常が発生すればスタッフが現場に駆けつけ、作動したセンサーの確認ボタンを押すと、他のスタッフには「対応中」を知らせるメールが携帯端末に届く仕組み。品質にもこだわっており、双方向通信によって電池残量の低下や故障を検知。管理用パソコン上で知らせる。
また、履歴管理機能も充実。「どの部屋で何のセンサーが、いつ反応したか」などを瞬時に把握でき、スタッフを効率的に配置することもできる。
このシステムの“ルーツ”となるのが、ホームセキュリティー機器「ホームバリア」。開閉とロックを検知するセンサー、ガラス破りを検知する衝撃センサーによって構成され、異常があれば警告音を鳴らして携帯端末にメールを送信する。当初は一般住宅の警備用システムとして活躍していたが、高齢者施設がその機能に着目。顧客の意見を取り入れながら、ココヘルパの開発につなげた経緯がある。
高齢化社会の進展に伴い、今後は一人暮らしの世帯を対象にした見守り技術の進化が求められる。そこでジーコムでは、ホームバリア用の技術を活用した新たな商品の開発を進める。一般的な見守り商品は、常に入居者を管理しているような印象を与える。こうした傾向に対し杉原社長は「プライベートの尊重といった観点からすれば異常」と指摘した上で、「必要なときはカメラを活用するが、不必要なときは使用しなくてよい」といった機器の実用化を目指す。その上で、何か困ったことが発生すれば近隣の住民が駆けつけられるように、新機種を通じて地域単位で高齢者を見守る文化を醸成させる構えだ。(伊藤俊祐)