公営住宅の孤独死、9都県市遺品廃棄 国「法的に問題」
2013年02月17日朝日新聞
【東孝司】公営住宅で孤独死した入居者の相続人がいない時に、正規の手続きを経ずに遺品を廃棄している自治体があることが分かった。朝日新聞が全ての都道府県・政令指定市に取材したところ、9都県市が認めた。手続きにともなう財政負担の重さが理由で、担当者は「グレーゾーンだと分かっているが、やむを得ない」と打ち明ける。
朝日新聞が47都道府県と20指定市に公営住宅の単身入居者の遺品の扱いを取材した。結果、相続人がいなかったり、引き取りを拒否されたりするケースが、67自治体のデータがそろう2009年以降に38自治体で起きていた。
相続人の存在が明らかでない場合、民法は、家主などの申し立てをもとに家庭裁判所が選んだ弁護士や司法書士らによる「相続財産管理人」が相続人の有無などを詳しく調査し、故人の財産を清算すると定めている。処分後に新たな相続人が名乗り出てトラブルになるのを防ぐためだ。しかし、この手続きを踏んでいたのは、北海道と大阪市だけだった。
東京都、兵庫県、島根県、福岡県、佐賀県、新潟市、神戸市、広島市、福岡市の9自治体はこの手続きを取らず、遺品を廃棄していた。法務省民事局は「法的に問題がある」と指摘する。
管理人の報酬は家裁が業務に応じて決めるが、通常は数十万円かかる。遺品の財産価値が小さく報酬に満たなければ差額が自治体負担になるため、「市費をそんなにつぎ込めない」(福岡市住宅管理課)との判断だ。大阪市は、遺品に100万円以上の価値があれば管理人を申し立て、その他は廃棄処分と使い分けていた。
相続人はいるものの引き取りを拒むケースでは、東京都や兵庫県、宮崎県など25自治体が、相続人から「行政に処分を委ねる」との同意を得て廃棄していた。
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〈相続問題に詳しく、相続財産管理人の経験もある吉岡毅弁護士(第一東京弁護士会)の話〉
債権者や相続人を捜したり、遺産を分配したりと管理人の役割は重要で、法的には大原則だ。ただ、安い家賃で提供される公営住宅では資産がないケースも多く、すべてに管理人を立てるのは財政負担を強いすぎる。行政が戸籍を調べ尽くしても相続人が見あたらない場合など、遺品を一定期間保管した上でならば廃棄もやむを得ないという、簡便な手続きも議論されていいのではないか。