「孤独死」最多 行政危機感 県内 今年11月末で223人

2012年12月31日中日新聞

 いわゆる「孤独死」とみられる事案が増えている。死後発見され、警察が病気など事件性のない変死として取り扱った1人暮らしの高齢者は、石川県警で今年11月末で223人と、最も多かった2010年を超え過去最多となった。行政も危機感を強め、地域とかかわりを持つ民間事業者らと情報共有を図っている。

 孤独死(孤立死)について、厚生労働省は自治体への通知で「近隣が亡くなったことに気づかず、相当日数を経過してから発見される事案」と説明、適切な支援を求めているが、明確な定義はなく、国の統計もない。

 県警によると、1人暮らしの高齢者の変死事案は増加傾向で、3年に126人だったのが、今年は11月末で、それまで最多だった10年の203人を20人上回った。高齢者の変死事案のうち、1人暮らしの割合は3年が20.3%だったが、今年は26.7%に達している。

 石川県によると、県内には65歳以上の高齢者が約275,000人(昨年10月現在)おり、うち1人暮らしは36,000人(一昨年10月現在)、高齢者夫婦のみの世帯は44,000世帯(同)。県は3月に「地域見守りネットワーク」を発足させ、高齢者の孤立化への対応に乗り出した。

 新聞や郵便の配達、電気やガスの検針などで個人宅を訪れる機会が多い民間事業者が、世帯の異変を行政に情報提供する。約40事業者と県内全19市町が現在3加している。

 参加事業者が孤独死を未然に防いだケースも。金沢市で9月に80代の男性が自宅で倒れ衰弱しているのを本紙の配達員が発見した。配達員が郵便受けに新聞がたまっていたのを不審に思い、声掛けして判明。男性は3日間動けずにいた。

 事業者独自の対策もある。県宅地建物取引業協会によると、1人暮らしの高齢者宅の家賃を口座引き落としでなく、集金にして毎月顔を合わせるようにしたり、定期的に管理会社が電話をして安否確認したりしている業者もあるという。

 ネットワークは今後も3加事業者を増やしていく方針。県長寿社会課の担当者は「民生委員などによる把握では限界がある。新たなセーフティーネットとしてのゆるやかな見守りが必要」と話す。