孤立死や窃盗を予防。賃貸住宅業界で見守りサービス普及の取り組み
2012年11月21日suumoジャーナル
全国賃貸管理ビジネス協会とアパマンショップホールディングスは、近年急速に社会問題化している「孤立死対策」や「防犯対策」に向けて、「見守りセキュリティサービス」を普及するなど、協力して問題解決に取り組むと発表した。高齢者を中心に孤立死などが社会的な問題となっているが、その背景と具体策について考えていこう。
近年「孤立死」が社会問題化している
「クレージーキャッツ」の一員、桜井センリさんが、先日自宅で死亡しているのが発見された。孤立死だったといわれている。こうした住宅内での孤立死が社会問題化している。
ニッセイ基礎研究所が、孤立死を「自宅にて死亡し、死後発見までに一定期間経過している人」と定義して、東京23 区の発生確率から推計したところ、全国で年間1万5000人の高齢者が孤立死していると見られている。
今年になってからも、全国各地で高齢者の孤立死が報道されているが、孤立死は高齢者や単身者にとどまらない。札幌市や立川市では、障害を持つ家族を伴う40代の姉妹や40代の母と子の孤立死が発見されている。
都営住宅で90代と60代の母娘の孤立死が発生した際に、単身ではなく60代の娘がいることで強制的な立ち入りをしなかったことから発見が遅れた事例を受けて、東京都と東京都住宅供給公社は、居住者の安否を確認するマニュアルを改定した。対象を独居高齢者以外の世帯にも拡大し、異常が見られる場合は直ちに立ち入りを行うなどとしている。
さらに、厚生労働省と国土交通省は、孤立死の防止対策について、都道府県などの住宅主管部局や住宅供給事業者の業界団体などに対し、地方自治体の福祉担当部局などとの連携を求める事務連絡を通知した。事務連絡では、高齢者のみの世帯や障害者単身世帯だけでなく、30-40代の家族が同居しているにもかかわらず家族全員が死に至ったケースや、生計中心者や介護者の急死によって援助を受けていた人まで死に至るケースもあることを指摘。
その上で、「地域において支援を必要とする者の把握のための関係部局・機関との連絡・連携体制の強化」を求めるとともに、「生命や身体、財産の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合はあらかじめ本人の同意を得ていなくても個人情報の提供が可能」であることを周知し、水道や電気・ガスの使用状況を地方自治体の福祉担当部局が利用することなども示唆している。
民間団体の立場から「孤立死」や「窃盗事故」への対策を普及
孤立死が生まれる背景には、高齢者や貧困層が増加していることも要因だが、地域社会などの見守り機能が薄れていることも要因となっている。今回の全国賃貸管理ビジネス協会などの取り組みは、「孤立死」や「窃盗事故」の予防措置と発生後の対策強化を全国レベルで進めるものだ。
具体的には、賃貸物件のタイプを問わず取り付け可能な「通信センサー端末」の設置、センサー端末からの情報をもとにした「駆け付けサービス」の提供、入居者や家主を対象とした「保険」付帯をセットにし、「見守りセキュリティサービス」としてパッケージ化し、同協会会員の賃貸管理会社や全国のアパマンショップを通じて普及していくとしている。
孤立死や窃盗事故を予防することは、賃貸住宅ビジネスにおいても重要な課題となる。こうした事態が発生した住戸は、事後の処理に時間や費用がかかるだけでなく、以後は空室リスクや賃料の見直しの可能性も起こる。低廉なサービスが普及することは、社会問題への解決策となるだけなく、賃貸業界にとっても課題解決策になることだろう。