孤独死した人の遺骨 引き取り手がいない場合の行き先は役所

2012年11月21日ガジェット通信

 近年、“孤独死”に言われる悲しい最期を迎える人が増えている。法律上は「行旅死亡人」と呼ばれる彼らの姿に、作家の山藤章一郎氏が迫った。

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本籍、住所、氏名、年齢、不詳
身長171cm
身体的特徴 黒色頭髪 中肉
着衣 白色タンクトップ 青色ジーンズ生地のハーフパンツ
所持品 スポーツバッグ1個(トランクス5枚 靴1足 サンダル1足他)

 上記の者は、平成24年7月24日午後0時15分頃、市内浜地区にあるビジネスホテルの客室内で発見されたものです。遺体は火葬に付し、遺骨は至徳寺に安置しております。心当たりの方は当市福祉援護課まで申し出てください。

 京都府舞鶴市市長 多々見良三

〈行旅死亡人〉と呼ばれる遺体である。官報に載って引き取り手を待つ。貧困、格差の底で、この死亡者が急増している。死後4日以上で発見される65歳以上が、年間1万5000人もいる。毎年、4万件を超す熟年離婚の末、高齢独身で、認知症、貧困など、肉体的金銭的苦闘を強いられて果てる人も少なくない。

 さらに30代、40代、ひとりでいるのが心地いい世代が〈行旅死亡人〉をたどる例も増えてきた。買い物はコンビニ、食うのはファストフード。他人とのつながりはネット、ケータイ。そして収入はぎりぎり。誰も訪ねて来ないから、部屋は踏み場もないごみの山。やがて自己放棄に陥って孤独死する若年層のことである。墓などむろんない。

 10年前には考えられなかった事態が進行している。孤独死は、区役所、市役所が警察から〈死体連絡表〉を手がかりに親族に連絡する。だが、たとえば、東京に出て結婚式で1度会ったきりの親類の男など、誰も引き取らない。

 杉並区のアパートで氏名、年齢不詳の男が死んでいた。部屋に母親らしきものの遺骨の壺がある。区役所は、男の田舎の遠縁を割り出して連絡をつけたが、〈拒否〉。仕方なく本人の骨は区役所が、母親の壺は〈特殊清掃業者〉が、引き取ってくれる篤志の寺に送った。宅配便の送り状に内容を記した。「陶器1個」。

※週刊ポスト2012年11月30日号