タクシー 交通弱者向け事業広がる

2012年10月29日読売新聞

 県内で買い物代行や高齢者の安否確認、塾などの習い事に通う子どもの送迎など新しいサービスを手がけるタクシー会社が増えている。共通するのは、車を自ら運転できない「交通弱者」を対象にしている点で、車社会の本県に合ったサービスといえる。事業者は「気軽に利用してもらえるようにしていきたい」と呼びかけている。

 新和タクシー(前橋市元総社町)は10月から「ヘルパータクシー」の名称で、客を乗せずにサービスを行う「救援事業」を本格的に始めた。サービスは、買い物代行、高齢者の安否確認、自動車のバッテリー充電、忘れ物の受け取り、病院の順番取り、処方薬の受け取りの6事業だ。いずれも、基本料金は移動時間も含め30分で2500円、以降30分ごとに2200円が加算される。

 本県では、商業施設の郊外化などが進んでおり、車を持たず日用品の購入も難しい「買い物難民」が増加している。また、独居老人の孤独死も社会問題となっている。こうした問題に対応する救援事業は、24時間365日営業するタクシー会社の利点を生かしたサービスだ。会社側にも、客の待ち時間を有効に利用できるメリットがある。

 同社の高齢者安否確認は、県外に住む家族らからの依頼を想定。所在を確認した上で、連絡する仕組みで定期的な利用も見込む。同社の武田恭直副社長は「運転手には地域に詳しい人も多い。地元ならではの視点でサービスを行いたい」と語る。

 群馬運輸支局によると、こうした救援事業を行うタクシー会社は増加傾向にあり、10月現在で認可したタクシー会社は、県内で9社に上る。

 一方、通常のタクシー事業で交通弱者に目を向けたサービスに取り組む動きもある。「榛名観光」(高崎市上並榎町)は2005年から習い事に通う子どもを、送迎する取り組みを行っている。子どもの緊張を和らげるため、乗務員を全て子育て経験のある女性にしたのが特徴だ。

 利用には、会員登録が必要だが、特に共働きの家庭などに人気があるといい、会員は月に2、3件ずつ増加。登録件数は約180件に上る。

 新しいサービスの増加に伴い、利用者の利便性を向上させようと、県内のタクシー会社など、66社が加盟する県ハイヤー協会(前橋市野中町)はホームページでの情報提供を強化。サービス内容が一目で分かる取り組みも始めている。