健康マージャン人気上昇 / 石川

2012年10月17日朝日新聞

 「賭けない、飲まない、吸わない」がスローガンの健康マージャン。お年寄りを中心に気軽に楽しむ動きが広がっている。
◆お年寄りの交流の場に◆
 金沢市池田町のマンション一室。60~70歳を超す男女が慣れた手つきで牌(ぱい)を積む。張り詰めた空気は無い。笑顔ばかりが目立つ。3年前にできた健康マージャン教室「金沢いきいき元気塾」だ。
 平日の昼からたくさんのお年寄りらが集まる。平均年齢は70歳。頭や指先を使うので、認知症予防のために参加する人や交流の場を求めて訪れる一人暮らしの人も多いという。会員数は120人にまで膨らんだ。
 今月21日には初の団体戦を開催する。4人が1チームとなり個々の総合得点で勝敗を競う。仲間を作り、互いの絆を深めるのが狙いだ。代表の音弘志さん(68)は「とにかく他人と会話をし、いつも顔を合わせることで孤立死を防ぐ。それが安否確認にもなる」と効果を挙げる。
 同市里見町の無職小山俊彦さん(70)は宮城県石巻市の出身だ。東日本大震災の影響で長女が暮らす羽咋市に移り住み、昨年6月からは金沢で暮らしている。「ようやく知り合いが増えた。色々な人と会話する機会が広がり、今はもう生活の一部になっている」。金沢市粟崎町に住む一人暮らしの能村加代子さん(76)は週3回のペースで通っている。「飼っている猫以外に話し相手が増えた」と喜ぶ。「思い切って家から出ることが大事。健康マージャンはそのきっかけにもなる」
 健康マージャンは数年前から都心部を中心に注目を集めていた。たまたま昨年末、金沢の音さんの活動がテレビで紹介されたため、福島県会津若松市や岐阜県高山市の老人会などから「うちの地域でもやりたい」と音さんのもとに手紙や電話で問い合わせが相次ぐようになった。
 静岡県袋井市の深谷猛さん(77)もその一人。深谷さんの地元では一人暮らしの高齢者が3分の1を占めるという。「老人会の代表として何か交流の場を作りたかった」と深谷さん。今では十数人がマージャン牌を持ち寄ってルールを学んでいるという。
 音さんは「健康マージャンはコミュニケーションの場の土台作り。超高齢化社会を救う切り札です」と期待を込める。問い合わせは元気塾(076・255・0252)へ。