住み慣れた家で「在宅ひとり死」迎えるには? カギは意志・経済力・家族の同意
2012年09月30日産経新聞
高齢になっても住み慣れた自宅に1人で住み続け、穏やかに死を迎える「在宅ひとり死」が注目されている。老いと共存し、自由を満喫しながらの自宅での死。しかし、その実情は暗いイメージの孤独死と紙一重だ。「在宅ひとり死」について考えた。(清水麻子)
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高まる関心
8月末、東京都内で開かれた社会学者の上野千鶴子さんらによる「在宅ひとり死」の準備セミナー。450人以上の高齢者らが詰め掛けた。
平成21年に上野さんが在宅ひとり死の概念を提唱して以来、社会の関心は高まる一方だ。しかし、現状は、なかなかかなうものではない。
厚生労働省の平成23年の調査では、自宅での死亡は約1割にとどまり、約8割が病院で亡くなっている。背景には、介護保険が、家族がいることを前提に設定され、1人暮らし仕様になっていないことなどがある。
しかし、上野さんによると、(1)本人の強い意志(2)経済力(3)家族の同意-があれば、在宅ひとり死はできる。具体的には、何千万円もする有料老人ホームの入居費用に貯金を充てるのではなく、在宅介護サービスに使う考えにシフトさせればいいという。
「介護保険の24時間対応の訪問看護や介護サービスを使えば、1割負担でヘルパーらに24時間体制で巡回に来てもらえる。終末期近くになり、本格的な介護が必要になったら、泊まり込みの家政婦を頼むなど思い切ってお金を使う。それでも費用は1カ月約45万円で、高級有料老人ホームの月額利用料と同程度」と上野さん。
家族と病院が「こんな重篤な患者を家に帰せない」と本人を施設に送り込んでしまうケースは多い。こうしたケースでは、それをはねつける強い意志を持つことも重要という。
近隣との友人関係
貯金が少なかったり、問題行動の多い認知症になるなどで介護期間が長引いたりする場合もある。
単身者の介護の実情に詳しいNPO法人「SSSネットワーク」(東京都新宿区)の出原富士子理事(65)は「暖房を付けっぱなし、パンを口に入れたままなどハプニングが多く中重度の認知症高齢者の1人暮らしはなかなか難しい」と話す。
しかし、出原理事は「鍵を握るのは元気な頃からの近隣の友人関係」と指摘。そのうえで、「日頃から安否状況を確認し合い、実際に亡くなり、発見された後のことまで頼み合える近隣の友人を多く見つけておけば在宅ひとり死は可能ではないか」と話している。